これはもしかして、物凄く集中している?試しに私も声を掛けてみよう。
「あの、入江さん?」
余り驚かさないよう、控えめな声で話しかけたつもり……だった。なのに、それまで何の反応も示さなかった入江さんの肩が突然ピクリと揺れて。
「この声…名前さん!?」
刹那、凄い勢いでこちらを振り返ったのだ。これにはその場の全員が驚いた。しかし当の入江さんはケロリとしている。
「ん?やあ綱吉君と名前さん。何時来たんだい」
「い、今ですけど…」
「そうなのかい?ごめん気付くのが遅くて…」
そして、何事もなかったかのように会話を始めてしまったのだ。色々と突っ込み所は満載なのですが、今は止めておこう。
先ずは当初の目的を果たす為に、持参したお弁当を手渡す事にした。
「入江さん、スパナさん。良かったらこれ食べて下さい。お二人に持って来た差し入れです」
「!!!名前さんが……僕の……為、に?」
「え〜〜〜とι入江さん?名前さんの話聞いてました?“入江さんの為”じゃなくて“入江さん達の為”にですよ??」
沢田さんがやんわりと突っ込みを入れたけれど、
「名前さんが僕の、為に…。〜〜っっ、生きてて良かったよおおお///」
入江さんの耳には全く入っていなかったみたい。
◇ ◇ ◇
パカリとお弁当の蓋を開け、中身を見たスパナさんが歓喜の声を上げる。
「あ、オニギ〜リだ!ウチ、日本食大好きだ。ありがとう、歌姫」
「いえ、そんな…。喜んで頂けて良かったです」
スパナさんは本当に日本が好き何だな。此処まで喜んで貰えると、作った側としても凄く嬉しい。
早々とおにぎりに手を伸ばすスパナさんを眺めた後、私は真剣な面持ちで入江さんへ向き直った。
「あの、入江さん。私…、今日は貴方にお聞きしたい事があって、こちらにお邪魔したんです」
「僕に?」
そして「何だろう?」と首を傾げる入江さんに、今回の訪問の、もう一つの目的を告げたのだ。
「六道骸さんの事です」
瞬間、驚いたように振り返る入江さん。けれど私は更に言葉を続けた。
「貴方は骸さんについて復讐者(ヴィンディチェ)からの情報を知っていらっしゃいましたよね」
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