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95.あたたかい場所


並盛町の探索から戻った、その日の夕食時。一つだけ空いた席を見つけて私は顔を顰(しか)める。

席の主はクローム髑髏さん。メローネ基地から戻って来て、まだ一度も彼女の顔を見ていない。

京子さん達の話では、自分の部屋から全く出て来ないのだそうだ。食事は部屋の前まで運んでいるらしいが、それにも一切手をつけていないとか。



(やはり、骸さんの事が原因なのでしょうか)



メローネ基地から戻る直前、クロームさんが泣きそうな顔で入江さんに訊ねた言葉を思い出す。



『骸様は…六道骸は今どうなっているんですか』




それは私もずっと気にしていた事で…。だけど、どうしても口に出す事が出来ない事柄だった。

彼は無事だと信じている。信じているのに不安は募る。それはきっと私の中に“もしかしたら”という考えがあったから。

けれど入江さんは、そんな私の『負の感情』を一瞬でかき消してくれた。



『――生きてるよ。それは間違いない』




嬉しかった。私の願望でしかなかった骸さんの生存が、第三者によって証明されたのだから。

けれど、彼の消息は未だに分からないまま。これではクロームさんだって安心できる訳がない。



(もう少し手がかりになるような事があれば…)



そこで再び入江さんの顔が脳裏を過ぎる。そうだ。彼ならまだ何か知っているかも知れない!!

思い立ったが吉日。私は早々と夕食を済ませ、外出の準備を開始した。




◇ ◇ ◇


折角二人の所に行くのだから…と短時間で作ったお弁当を持参して私はメローネ基地跡を訪れた。

中に入ると、入江さんとスパナさんが何やら難しい顔で作業を行っている最中で。正直、話しかけられる雰囲気ではない。

声を掛けて良いものか迷っていると、私に付き添ってくれていた沢田さんが代わりに声を掛ける。



「入江さん、スパナ」

「ボンゴレ」

「………」



スパナさんは直ぐに気付いてくれた。でも入江さんは何故か無反応で…。



「おい、てめー!!わざわざ10代目がいらっしゃってるのに、シカトとはいい度胸じゃねーかっ」



その態度に獄寺さんが苛つかない筈がない。だけど、獄寺さんが怒鳴り声を上げても、やはり入江さんは知らん顔。


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