それは、食事を終えたバジルさんがお休みになって直ぐの事。食器の後片付けをしていた私の元に沢田さんがやって来て、
「オレ達これから町に行くんですけど、良かったら名前さんも一緒に行きませんか?」
突然そんな事を言われた。何でも京子さんとハルさんが、この時代の自分の家を見に行きたいとかで、それなら全員で地上散策にでも行いこか…と言う話になったらしい。
「本当は京子ちゃん達に、この時代の自分の家を見せるのは抵抗があるんだけど、リボーンが外出許可を出してくれて…」
「リボーン…さんが」
「うん。それで名前さんもどうかなって」
「………」
沢田さんの誘いは凄く嬉しい。でも、頷いていいものか悩んでしまう。
返事を躊躇(ためら)う私を見て、沢田さんは慌てたように言葉を続けた。
「あ、あのミルフィオーレの事なら心配しないで下さい!メローネ基地が消えて敵の反応も完全に消えたってジャンニーニが言ってましたから!!」
私が行くのを躊躇っているのは、ミルフィオーレに狙われるからだと彼は思っているらしい。でも私が躊躇(ちゅうちょ)する理由は他にあった。
きっと他人が聞けば『そんな事か』と呆れるような、些細な理由。だけど私にとっては、心を痛めるのに十二分な理由。
本当なら遠慮したいと言う思いがあった。でもそれでは折角誘ってくれた沢田さんに申し訳ない。
「はい。それでは私もご一緒させて頂きます」
だから私は沢田さんの誘いを受ける事にした。
この決断が“後に自分を苦しめる原因になる”と、分かりながら―…。
◇ ◇ ◇
町に出て、先ず向かったのは“並盛商店街”。
京子さんとハルさんは女の子らしく、ウインドー・ショッピングを堪能し、ランボ君とイーピンちゃんは、これまでの鬱憤を晴らすように、終始なにかを食べ続けていた。
皆が個々の時間を楽しむ中でも、やはり私の心は晴れない。勿論楽しくない訳ではない。こうして彼らの過ごした並盛町を見て回れたのだから。
だが、この町を見て回れば見て回る程、私の中には孤独が生まれていた。
そして決定的だったのが、それぞれが自由時間を過ごした後の、何気なく集まった“この場所”。
「並盛…中学」
「やっぱり、考える事はみんな同じ何だね」
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