◇ ◇ ◇
沢田さんに言われるまま、取り敢えず簡単に作れる物を用意してみた。
どの位用意すればいいのか分からなかったから、結構な量の食事を準備したつもりなのだけど、
「御馳走様でした」
目の前の少年は、それらをぺろりと平らげてしまって…。見かけは細身なのに、物凄い大食漢だ。
「3日振りの食事だったので、慌てて食べてしまいましたが、とても美味しかったです!有難うございました」
「いえいえ。簡単な物ばかりで申し訳ないです」
私はニコリと笑みを向けながら、少年の前に湯飲みを差し出す。
この人はバジルさんと言って、沢田さん達と同じ10年前の世界からやって来たらしい。それにも驚いたが、更に驚いたのは、彼が既にこの世界の事を知っていた事だ。
それも全てバジルさんが持っていたボンゴレの勅命である、死炎印のついた“助太刀の書”に記してあったから…らしい。
「この基地の事と、この時代の戦い方、それから歌姫の事も記されており、いざという時は燃えてなくなる極秘文章です」
彼がこの時代に来たのは10日前で、場所はスペイン。その時、パスポートと匣兵器と共に、その助太刀の書が置いてあったのだと話してくれた。
「因みにこれが匣です」
そう言ってバジルさんは机の上に水色の匣を置く。それには『CEDEF』と文字が刻まれてあった。
それを手にした獄寺さんが、小さく呟く。
「CEDEF(チェデフ)。確か門外顧問組織の事だ」
「門外顧問と言うと確かラルさんや沢田さんのお父様が属されている?」
「はい。ですが残念ながら此処へ来るまで仲間達には会う事は出来ませんでした。――しかし、この書と匣兵器のお陰で、途中で出会した、ミルフィオーレファミリーを何とか撃退できたんです」
それには更に驚いた。
「凄いな、バジル君!もうミルフィオーレと戦ってるなんて…」
「ええ。6回程戦闘を」
沢田さんの言う通りだ。本当に凄いと思う。
「つまり、何者かの指示で、バジルはツナ達とは別のルートで鍛えられ、此処(アジト)に合流した…と考えられるな」
「“鍛えられる”って、メローネ基地で鍛えられた、オレ達みたいに?」
沢田さんの疑問に、リボーンさんは嗚呼と頷く。
「でも何の為に?」
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