これまでは大地の匣を欲しているから、私の事を狙うのだと思っていた。
しかし白蘭は大地の匣ではなく“私”が欲しいと断言したのだ。あの人と会ったのは過去に1度、それも数分足らず。気に入られる要素など全くなかった筈なのに…何故?分からない。分からない事ばかりで混乱する。
「名前さん。そんな悲しそうな顔をしないで下さい。貴女に……そんな顔は似合いませんから」
その声に反応し、顔を上げると、優しく微笑む入江さんと目が合った。
けれどそれは本の一瞬。彼は直ぐに真剣な面持ちへと表情を作り替える。
「苦難を乗り越えてきた綱吉君達なら出来るさ。成長した君達なら奴らと渡り合える。僕達だって、ただ君達をいじめてきた訳じゃない!!」
入江さんは踵(きびす)を返すと、一直線に装置の元へと歩いていった。
「君達を鍛える事は、この新たな戦力を解き放つ事でもあったんだ!」
そして徐(おもむろ)に手を伸ばし、入江さんが装置に触れた瞬間、再び装置の中央が開き出す。
「皆の成長なくしては使いこなせない新たな力。この時代のボンゴレボスから君達への贈り物だ。心して受け取ってくれ」
入江さんの言葉と共に、装置の中央から7色に光る“何か”が飛び出してくる。その“何か”は迷う事なく、7人の守護者の元へと飛んで行き、
「この時代のボンゴレ10代目より、君達に託された“ボンゴレ匣”だ!」
各々の手元で炎を点す。それぞれの属性に別れているため色は違うが、同じデザインで統一された、ボンゴレのエンブレムが刻まれたボンゴレ匣。
「ボンゴレ…匣?」
皆が興味深げに新たな力を眺めていた時だ。
『う゛お゛おおい!!』
突如、無線機から響いた聞き覚えのある声。幻聴かとも思ったが、そうではないらしい。
『ヴァリアーから通信を繋げとの要請です!ミルフィオーレに盗聴される恐れがあるのですが、怖いから繋ぎますよ!!』
震えるジャンニーニさんの声の後、無線から聞こえて来たのは…?
『てめーら!生きてんだろうなああああ!!』
私の予想した通りの人。
「スクアーロさん!!」
やはりスクアーロさんだ。喜びの余り彼の名を呼んだ瞬間、無線の向こうでは何故か慌てる声が。
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