「私の……歌姫の事ってどういう事ですか?」
「貴女やこの時代のアルコバレーノであるラル・ミルチさんは疑問に感じた事がある筈だ。何故、白蘭さんが“歌姫の事を知っていたのか”と…」
「「!!」」
入江さんの問いかけに、私とラル・ミルチさんは同時に息を飲んだ。
明らかに動揺の色を見せる私達に、事情を知らない沢田さん達は不思議そうに小首を傾げる。
「よく分からないんだけど、白蘭が名前さんを知っている事が、そんなにあり得ない事なの?」
「…嗚呼。絶対にね。何故なら歌姫の情報は――数十年も前に“抹消”されているからなんだ」
その通り。だから私達は疑問に感じていたのだから。この世から抹消された筈の歌姫の情報を知っていた、白蘭に―…。
「僕はボンゴレの人間ではないから詳しい事は分からないんだけど、歌姫の事はファミリー内でも最重要機密に指定されていて、知っている者は一部の幹部と同盟組織のトップだけだと聞いてる」
おまけに実存する資料は殆どなく、唯一残っているものはボンゴレで厳重に管理されていると入江さんは説明を加えた。
「だからボンゴレの関係者でない白蘭さんが歌姫の事を知っているのは、あり得ない事なんだよ」
しかも、あり得ない事はそれだけではないと、入江さんは続ける。
「実はミルフィオーレの6弔花の一人、嵐のマーレリングを持つのはボンゴレ独立暗殺部隊・ヴァリアー所属、ベルフェゴールの双子の兄なんだ」
「ベルさんの!?」
ベルさんに兄弟…それも双子の兄が居たなんて初耳だ。けれどそれもその筈。草壁さんの話によるとベルさんのお兄さんは十数年前に亡くなっているらしいのだ。それもベルさんの手に掛かって。
「漏れる筈のない情報を知っていたり、死んだ筈の人間が生きている。…その事に白蘭の能力が絡んでるって言うんだな」
リボーンさんの問いに入江さんは無言で頷いた。
「おい、でたらめとかじゃねーんだろうな!」
「いいや。正一が言うんだ。間違いないよ」
苛立ち混じりの獄寺さんに答えたのは沢田さんの隣に立つ繋ぎ姿の見知らぬ男性。そう言えばまだ名前を聞いていないな。
「何なんだ、おめーは!さっきから10代目の横に居座りやがって!!10代目の右腕は、このオレなんだからな…っ」
[←][→]