「ああっ、忘れてた!!」
突然、入江さんが大声を上げたのだ。それに驚き、彼を見上げれば、入江さんは慌てたようにリボーンさんを振り返る。
「ボンゴレ基地になにか連絡は!?」
「ん?……ないぞ」
「まだか。そうか。まだだよな…っ、いててて」
何かを考え込んだ後、急にお腹を押さえてその場に蹲(うずくま)った入江さん。私は慌てて彼の傍に駆け寄り、視線を合わせるように座り込んだ。
「入江さん!?」
「また…緊張して来た」
「え?」
「心配ない、歌姫」
呼ばれて顔を上げると、入江さんを挟む形で私に笑いかける男の人が…。沢田さんの隣に居た人だ。でも一体誰だろう?
「正一は緊張するとお腹が痛くなるらしい」
「そう、なのですか?」
「うん。正一は凄い奴だけど、そういう風に見えない所が凄いんだ」
「名前さんに余計な事言わなくていいって//それにそれ褒めてないだろ」
お腹を押さえながらも突っ込みを忘れない入江さんは……確かに凄い人だと思います。私はふふ、と笑みを零しながら二人のやりとりを見つめる。
「兎に角、君達が此処に辿り着く事が白蘭さんを倒す為の一つ目の賭けだった。それを第一段階とすると、クリアすべき第二段階があるんだ」
「え!?まだ戦うの!」
「いや……つっ…違うよ。君達には暫く傷を癒して貰うつもりだ。この第二段階次第だけど…」
リボーンさんが問う。
「何なんだ?その第二段階って」
「君達も聞いてるだろ?今日、全世界のミルフィオーレに総攻撃を仕掛ける作戦に出るって」
私は大きく頷いた。その作戦に合わせて皆さんは此処へ突入したのだ。知っているのは当然。でもどうしてそんな質問を?
「その総攻撃が失敗すると、全ては一気に難しくなる。…中でも一番の鍵となるのは――」
“イタリアの主力戦だ”
◇ ◇ ◇
入江さんの話によると、その主力戦の中心となっているのはXANXUSさん率いるボンゴレ独立暗殺部隊ヴァリアーとの事だ。
彼らの強さは知っているが、心配なものは心配だった。何故って、たった32名しか隊員を持たないヴァリアーでは相手との戦力差があり過ぎる。
(どうかご無事で…)
祈る事しか出来ない自分が歯痒いけれど、仕方ない。今の私にはこんな事しか出来ないのだから。
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