此処に来てからも、自分がもっと早く基地を動かして皆を捕らえる事も出来たと入江さんは話す。
でも、それでは彼らが経験を積む事が出来ないから、だからわざともたついて遅らせたんだと入江さんはそう言っていた。
「それだけじゃない。守護者でないイーピン・笹川京子・三浦ハルまで過去から連れて来たのは…何故だか分かるかい?」
“人は守るモノがあると強くなれる。その為に、必要だと判断したんだ”
彼の話を聞きながら、私はぎゅっと両手を握り締めた。その時だった。
タタッと誰かが走り寄る気配を感じて、弾かれたように顔を上げると、
「――そんな…っ、そんな理由で、もし京子ちゃん達に何かあったらどうするんだあああっっ」
入江さんの胸倉を掴み上げ、激しく怒鳴りつける沢田さんの姿が目に入る。こんなに取り乱した沢田さん…初めて見た。
「京子ちゃん達だけじゃない!鍛えられる前に、山本や獄寺君やラル…みんなこの戦いで……っ…この戦いで死んでたかも知れないんだぞっっ」
更に強く胸倉を掴まれ、入江さんは苦しそうに息を洩らす。咄嗟に二人の間に入ろうとしたけど、
「僕だって一生懸命やってるよ!!予定になかった名前さんがメローネ基地に来ちゃったり、予想外の事とか起きて大変だったんだぞっっ」
突然、逆ギレしたように声を荒げる入江さんに、私も沢田さんも呆然。その隙に今度は入江さんが沢田さんに詰め寄った。
「これは君達が思っている程小さな問題じゃないんだ!それに、この計画はこの時代の君の意志でもあるんだ、綱吉君!」
――沢田さんの?
「この計画は絶対にミルフィオーレ側に漏れてはいけなかった。その為にこれは僕と10年後の君と10年後の雲雀恭弥の三人だけの秘密だったんだ」
「!!僕らの設定したゴール。その僕らって…」
沢田さんと、雲雀さんと、入江さんの三人の事?
「嗚呼。10年後の雲雀君がこちらの奇襲を予測できたのもその為なんだ」
もう愕然とするしかない。それは沢田さんも同じで、ただでさえ大きな瞳を更に見開いていた。
そんな沢田さんを、入江さんは何処か寂しそうに見下ろしていて…。
「10年後の君は関係ない仲間を巻き込む事には最後まで躊躇(ちゅうちょ)していた。だけど最終的にそれが過去の自分に必要な事であり、大切な名前さんを守る事に繋がるのならと了承したんだ」
『俺がこんな決断を下した何て知ったら…名前はどんな顔をするかな』
明かされる 真実
(名前さん。この時代の綱吉君は、何時でも貴女の事を考えていたよ)
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