ポツリと呟いた言葉に、その場の全員が私を振り返る。それは入江正一も然(しか)りであった。
「流石歌姫だな。その通り。我々にはボンゴレリングが必要なんだ」
「分からない!どうして?どうしてこんな事をしてまでボンゴレリングを欲しがるのですか!?」
「簡単な話だ。白蘭さんがこの世界を手中に収め、もう一つの世界を作る為には……ボンゴレリングが必要だからだ」
入江は背中のマントを翻(ひるがえ)し、こちらに歩み寄ると、ケース越しに私を見下ろして来た。
「この世には力を秘めたリングが数多く存在する。中でもボンゴレリングとマーレリングは特別だ」
7つのボンゴレリング
7つのマーレリング
そして、アルコバレーノの7つのおしゃぶり
この各3つ。計21個のリングを73という。
「そして73の原石こそが、この世界を創造した礎であり、歌姫の身体に封印された大地の匣を解放する鍵でもあるんだ」
世界を創造?封印を解く鍵?突然そんな事を言われても信じられる訳が…
「信じる信じないは自由だが、歌姫を守る事を使命とし、73と同化したアルコバレーノは、この話を否定しない筈だ」
「「っっ」」
入江の言葉に、リボーンさんとラルさんが僅かながら動揺の色を見せた。
その時だ。私と入江正一を隔(へだ)てていたケースが突然開いて、驚いたのも束の間。いきなり手首を掴まれたのだ。
「装置の重要性が分かった以上、歌姫を人質として使う必要はなくなった。これからお前を白蘭さんの元に連れて行く」
「は、離して…っ」
『名前(さん)!?』
入江の手から逃れようとするも、相手は物凄い力で私を引っ張って行く。
その間に、残ったチェルベッロが沢田さんに取引を持ち掛けていて。
「沢田綱吉。大空のボンゴレリングを渡しなさい。さもなくば、貴方の守護者達と最後の別れをする事になりますよ」
「これは交渉ではない。――“命令だ”。三つ数える間に大空のボンゴレリングを渡しなさい」
ボンゴレリングを渡してはいけない!でもそれでは皆さんの命が――!?
“3”
「10代目!!オレ達に構わず名前を…っっ」
“2”
「やれ沢田!どーせそいつらは大空のリングを奪った後、オレ達を全滅させる気だぞ!!」
“1”
絶体絶命
(時間よ、止まって!)
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