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88.絶体絶命 *****


ポツリと呟いた言葉に、その場の全員が私を振り返る。それは入江正一も然(しか)りであった。



「流石歌姫だな。その通り。我々にはボンゴレリングが必要なんだ」

「分からない!どうして?どうしてこんな事をしてまでボンゴレリングを欲しがるのですか!?」

「簡単な話だ。白蘭さんがこの世界を手中に収め、もう一つの世界を作る為には……ボンゴレリングが必要だからだ」



入江は背中のマントを翻(ひるがえ)し、こちらに歩み寄ると、ケース越しに私を見下ろして来た。



「この世には力を秘めたリングが数多く存在する。中でもボンゴレリングとマーレリングは特別だ」



7つのボンゴレリング

7つのマーレリング

そして、アルコバレーノの7つのおしゃぶり

この各3つ。計21個のリングを73という。



「そして73の原石こそが、この世界を創造した礎であり、歌姫の身体に封印された大地の匣を解放する鍵でもあるんだ」



世界を創造?封印を解く鍵?突然そんな事を言われても信じられる訳が…



「信じる信じないは自由だが、歌姫を守る事を使命とし、73と同化したアルコバレーノは、この話を否定しない筈だ」

「「っっ」」



入江の言葉に、リボーンさんとラルさんが僅かながら動揺の色を見せた。

その時だ。私と入江正一を隔(へだ)てていたケースが突然開いて、驚いたのも束の間。いきなり手首を掴まれたのだ。



「装置の重要性が分かった以上、歌姫を人質として使う必要はなくなった。これからお前を白蘭さんの元に連れて行く」

「は、離して…っ」

『名前(さん)!?』



入江の手から逃れようとするも、相手は物凄い力で私を引っ張って行く。

その間に、残ったチェルベッロが沢田さんに取引を持ち掛けていて。



「沢田綱吉。大空のボンゴレリングを渡しなさい。さもなくば、貴方の守護者達と最後の別れをする事になりますよ」

「これは交渉ではない。――“命令だ”。三つ数える間に大空のボンゴレリングを渡しなさい」



ボンゴレリングを渡してはいけない!でもそれでは皆さんの命が――!?



“3”



「10代目!!オレ達に構わず名前を…っっ」



“2”



「やれ沢田!どーせそいつらは大空のリングを奪った後、オレ達を全滅させる気だぞ!!」



“1”



絶体絶命


(時間よ、止まって!)


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