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85.目覚め **


「……煩いよ、君。僕に命令しないでくれる」



雲雀さんは私を支えていない逆の手でトンファーを構え直すと苛立たしげに幻騎士を睨みつける。



「雲雀恭弥。貴様はまだ自分の置かれた状況が理解出来ぬようだな」



対する幻騎士も、鋭い目つきで雲雀さんを睨み返し、そして彼に知らしめるように、幻覚で消した筈の誘導弾を一瞬だけ視覚化して見せたのだ。



「ならば今一度確かめるが良い。貴様が置かれている――状況をなっ」



こちらに向けられた何百という数の誘導弾。それらは何時でも発射出来るよう攻撃態勢に入っている。もしあれが一斉に発射されれば、私に防ぐ手段はもう残っていない。



(私の力は既に限界を超えている。ならどうやって雲雀さんを守れば…)



いや。力が使えなくても、一つだけ方法がある。私は雲雀さんの手をそっと離し、覚束(おぼつか)ない足取りで前に歩み出た。そして幻騎士を見据え強い口調で宣言する。



「それなら…私も言った筈です。貴方に雲雀さんを…傷つけさせないと」

「力を使い切った貴様に何が出来る、歌姫」

「…確かに、歌姫の力で雲雀さんを守る事は、もう出来そうにありません。――ですが…っっ」



私は両手を広げて雲雀さんの前に立ちはだかった。それを見た幻騎士は驚いたように瞳を見開く。



「守る事はまだ出来る」

「自らを盾に!?貴様…死を望んでいるのかっ」

「望んでいる訳ではありません。ですがこの方はこの時代の…いいえ、世界の希望。失う訳には…いかないのですっっ」



この時代に集まりつつあるボンゴレリング。きっとそれは白蘭に対抗する為の一筋の光なのだ。

その光を失う訳にはいかない。例え自分の命と引き替えにしても、守らなければならないの!



「成る程な。ならば歌姫、先ずは貴様を排除しなければならないようだ」



幻騎士がそう告げるのと同時に、上空でけたたましい音が響き渡った。私はハッと上を見上げる。



(まさか誘導弾が…!?)

「安心しろ。殺しはせぬ。だが手足の何本かは吹き飛ぶかも知れぬがな」



発射された!そう思った時には――もう遅い。

姿の見えない誘導弾が、騒音を響かせながら近付いて来る。覚悟を決めて、ぎゅっと瞳を閉じた瞬間……突然、背後から腕を引き寄せられたのだ。


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あきゅろす。
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