「…しかも“刃”でなく“柄”で倒そう何て…、…随分ふざけてるね」
多少の怪我はしているようだが、何故…?何故、頭を割られたかも知れないのに彼は動けるの?
そんな疑問を抱いたのは私だけではない。私の腕を掴む幻騎士の手にも僅かに力が籠もる。彼もまた動揺しているのだ。
「確かに頭を割った筈……まさかリングの炎!?」
その時、幻騎士の表情が一変する。リングの炎?確かに幻騎士はそう口にした。不意に雲雀さんに視線を戻すと、血を拭う彼の指にキラリと光るボンゴレリングが見えて。
(そうか、ボンゴレリング!あのリングを使ったなら幻騎士の攻撃を防ぐ事も可能の筈です!!)
でも相手は過去から来たばかりの雲雀さん。リングを使いこなせる訳なんて…。それに聞いた話によると、10年前はリングの力が発見されて間もない頃。中学生の雲雀さんが知っている筈がない。
「貴様、この時代の戦い方を知っているか?」
どうやら幻騎士も私と同じ疑問を抱いたらしい。彼の問いかけに雲雀さんは「…何の事?」と訝しげに顔を顰(しか)める。
「ではこれを見た事はあるか?」
そう言って再度訊ねる幻騎士の左手には霧の匣兵器が握り締められていた。暫しの沈黙の後、雲雀さんが出した答えは、
「オルゴールかい?」
“分からない”と言う事。それを理解した幻騎士は瞬く間にリングに炎を点し、匣へと注入。
「ならば圧倒的に倒すのみ」
刹那、開匣した匣から大量の炎が放射した。辺りの景色は次々に塗り替えられ、現れたのは四方を囲む無数の誘導弾。
「これは、貴様の置かれた状況を分かり易く視覚化したものだ。貴様は何百という誘導弾に囲まれている。――更に…」
(消えた!!?)
我が匣兵器は姿を消し、霧の中の幻となる。
「成長したお前は経験によりこれを退けられたが貴様にはそれがない。俺と戦うには…10年早い」
(駄目っ、このままじゃあ雲雀さんが…!)
「さらばだ、雲雀恭弥」
消えた誘導弾が、雲雀さん目がけて襲いかかろうとした――次の瞬間。
「させない」
彼の周りを眩い光が包み込んだ。雲雀さんを守った眩い光。それは紛れもなく私が発動させた、
「これ以上貴方に、雲雀さんを傷つけさせない」
“守りの歌”だった。
参戦 風紀委員長
(だって貴方は、この世界の希望だから…)
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