83.笑顔の花 ***
「何だ」
「雲雀恭弥です」
「!!」
けれど、チェルベッロの告げた名前に、入江は弾かれたように振り返る。
「では、先程入った新たな潜入者というのは、雲雀だったのかっっ」
「はい。匣兵器実験場をモニター出来ました。間違いありません」
「映せ」
第4ドッグの映像の横に、匣兵器実験場の映像が写し出される。けれどそこに映っていたのは、画面一杯の針山のようなもの。入江は目を見開く。
「一体これは何なんだ」
「詳細は不明ですが、雲雀の匣兵器と思われます。恐らく幻騎士と雲雀はこの中に…」
(中…だと?)
信じられない。これが本当に匣兵器なのか?どんなにカメラを切り替えようと、何処までも同じ光景が続いている。しかしカメラがある一カ所を捕らえた瞬間、入江の目はそれに釘付けになった。
何故ならあれは!あそこに映っているのは…っ
「歌姫!!!」
一瞬しか画面に映らなかったが間違いない。あれは自分達ミルフィオーレが欲して止まないボンゴレの歌姫“名字名前”!
◇ ◇ ◇
ガキン、ガキン。激しく金属のぶつかり合う音は、一瞬たりとも止む事がない。未だ互角の戦いを続ける雲雀と幻騎士。
確かに互角の戦いを繰り広げてはいるが、雲雀には不利な点があった。
「…大分息が上がって来たね」
「何故笑っていられる」
それは彼が一つもリングを持っていないと言う事だ。対する幻騎士はリングの中でも最高クラスのマレーリング保持者。
「裏・球針態とやらは匣兵器こそ封じたが、リングの力は封じていない」
幻騎士はそれを知らしめるかの如く指に填めたマーレリングに炎を灯す。
「リングを“持つ者”と“持たざる者”の力の差は知っていよう。体技がほぼ互角なのは分かった筈。リングを持たぬ貴様に勝機はないのだぞっ」
なのに何故笑う!!
「…確かに君の強さは予想外だったよ。お陰でスケジュールに狂いが出たしね…(……本当なら、もう少し名前の傍にいられたんだけどな…)」
雲雀は一瞬だけ幻騎士から視線を逸らした。その目に浮かぶのは球針態の外で待っている筈の名前の姿。何も告げずにこんな事になって、さぞかし心配している事だろう。
それに、こんな事にならなければ名前に話したい事があったのに…。
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