「…つまりこれでやっと君の本気が見れる訳だ」
「貴様のもな」
両者、互いに武器を構え、戦闘を開始する。先に攻撃を仕掛けたのは…
「奥義・四剣」
「(足?)」
両手だけではなく、両足にも剣を装備した幻騎士だった。幻騎士は瞬く間に雲雀との距離を縮め、相手に切りかかる。雲雀はその攻撃を紙一重で交わし、冷静に対処した。
四本の剣から繰り広げられる華麗な剣術を二本のトンファーで防ぐ雲雀。
「両手の剣を受け止めれば両足の剣。両足の剣を受け止めれば両手の剣が襲いかかる。繰り出される四本の剣を止める術はない。それが奥義…」
“四剣”
「……生憎、曲芸には興味なくてね」
左足の剣を受け止めながら、どうでも良さ気に雲雀は呟く。対する幻騎士は両手の剣を交差させ、
「永遠に黙するが良い」
凄まじい一撃を雲雀に食らわせた。雲雀は咄嗟に防御態勢に入り、
ガキキキン。
響く衝突音。直後、両者はザアアアと後方に滑って行き、球針態の刺付近で停止する。雲雀は衝撃と反動を利用して幻騎士の攻撃を逃れたのだ。
(この男…)
「出来るね」
睨み合う両者の頬には、左右対称に同じような掠り傷が出来ている。恐らく球針態の針によって出来たものだろう。
幻騎士は苛立たしげに眉を顰めた。確かに自信があるだけの事はある。悔しいが体術はほぼ互角。
「貴様の格闘センスは認めざる負えまい。……だが、次は外さんっ」
「…楽しみだね」
両者は再び激突する。
◇ ◇ ◇
同じ頃。第4ドックでも新たな戦いが幕を開けていた。沢田綱吉VSミルフィオーレ第12部隊隊長のアイリス率いる死茎隊。
その様子をコントロールルームから傍観していた入江は深く息を吐く。
「まさかスパナが沢田綱吉を匿っていたとはな」
信頼していただけに、彼の裏切りは入江に多大な衝撃を与えた。…かといって情けは無用。裏切り者は始末するしかない。アイリスにもそう伝えてある。あとの問題は、
(匣兵器実験場か)
「入江様。幻騎士のいる、匣兵器実験場の異常の原因が分かりました」
その時、タイミング良くチェルベッロから報告が入る。入江は振り返る事なくモニターを見つめたまま、続きを促した。
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