雲雀さんに「君達をメローネ基地に連れて行く」と言われた時は驚いた。
私や怪我人のクロームさん・子供達を連れて行った所で何かの役に立てるとは思っていなかったし、それに幾ら雲雀さんや草壁さんが一緒と言っても、敵アジトにこの面子で乗り込むのは余りに危険だと思ったからだ。
しかし、そうではないと、私は直ぐに思い知らされる事になる。
(……すんなりと中に入れてしまいました)
そう。私達は既にメローネ基地の内部にいるのだ。しかも敵に怪しまれる事なく、平然と基地内の廊下を歩いている最中。
まさかこうも簡単に潜入出来る何て。これも全てクロームさんのお陰だ。
私達は今、彼女の作り出した幻覚によってミルフィオーレの隊員の姿に変化している。つまりミルフィオーレの人達には、私達がボンゴレアジトから戻って来た“味方”にしか見えないと言う訳。
(――でも、幻覚を作り出すのは物凄い体力を消耗すると聞きました)
私は前を歩くクロームさんにそっと声を掛ける。
「クロームさん大丈夫ですか?余りご無理は…」
「平、気」
「ですが、まだ傷も癒えていませんし…」
「大丈夫。それより…貴女の方が顔が真っ青」
クロームさんに指摘され、私はギクリと肩を揺らした。気付かれないよう隠していたつもりなのだが、無駄だったらしい。
「確かに彼女の言う通りです。まだ体力が回復されていないのでは?」
草壁さんも心配そうに私を振り返る。
「…いえ。身体の方はもう何ともないんです」
――ただ、さっきから胸が騒いで治まらない。
メローネ基地内に入る前からジワリジワリと感じていた違和感。それが次第に大きくなっている。私は痛む胸を押さえつつ、きゅっと瞳を閉じた。
(この胸の痛み。さっきまでは半信半疑だったけれど……間違いない)
守護者の危機を知らせてくれる“あの痛み”と同じだ。つまりこの基地に潜入した仲間の身に何かあったと言う事だろう。
(でも一体誰に何が?)
胸の痛みの所為で苦痛の表情を浮かべる私を草壁さんとクロームさんは心配そうに見つめていた。
「兎に角、今は先を急ぎましょう!名前さんもクロームさんも辛いかも知れませんが、もう少し頑張って下さい!!」
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