微かな疑問を抱きつつ、瓦礫の山と化した道を進んで行いた時の事だ。
「恭さん!名前さん!」
聞き覚えのある声がして私は顔を上げる。するとそこには雲雀さんの部下の草壁さんの姿が。でもそれだけではなくて…。
「――どう、して…」
何と、彼の傍にはランボ君やイーピンちゃん。そして、まだ集中医療室で治療中のクローム髑髏さんの姿まであったのだ。
(どうして三人まで!?)
慌てて草壁さんに問おうとしたのだが、それよりも先に草壁さんが物凄い形相で駆け寄って来る。
「どどどどどうされたんですか名前さん!まさか、何処かお怪我を!??」
どうやら雲雀さんに抱えられたままやって来た私を心配してくれたらしい。本当に優しい人だ。
「大丈夫です。少し体力を消耗し過ぎただけですから。私の事より、どうして皆さんが此処に?」
「どうして、て…まさか恭さんっ、名前さんにこれからの事を話していないんですか!?」
「…嗚呼…」
私は首を傾げる。これから一体何があると言うのだろうか。子供達や、まだ本調子ではないクロームさんを連れ出して。
(そうだクロームさん)
さっきも言ったが彼女は集中医療室に入っていたのだ。それなのにこんな所に居て良いのだろうか。私は咄嗟に「降ろして貰えますか」と態度で示す為、雲雀さんの胸を軽く押した。それを理解した雲雀さんはゆっくりと地面に降ろしてくれる。
地に足が着いた瞬間、少し身体がフラついたけれど、私は気にせず、座り込んでいるクロームさんの元に歩み寄った。
「大丈夫ですか?」
「…だ、れ?」
手にした三叉槍を握り締め、不安げに私を見上げるクロームさん。そうか。過去の彼女とは、まだ面識がなかったんだ。
それなら警戒するのは当然。私は幼いクロームさんを安心させるよう、ニコリと微笑みを向けた。
「怖がらないで下さいクロームさん。私は名字名前と言います」
「…名字?」
「名前で構いません。この時代の貴女はそう呼んでくれていましたから」
「わ、たしが?」
クロームさんは驚いたように瞳を見開く。その表情を見て、更に笑みを深める私。こう言う表情は昔も今も変わらないな。
「はい。だって貴女と私はお友達でしたから」
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