75.作戦開始 ***
「敵は大勢いるんでしょ!?二人じゃ無理だよ!オレ達も行かなきゃっ」
「ならんぞ沢田!!それでは雲雀と名前が身体を張る意味がなくなるっ」
「でもお兄さんっ」
『ミルフィオーレはかなりの兵力をそこに集結させている。それを雲雀達が一手に引き受ける事で、地上と敵アジトの戦力が手薄になるんだぞ』
「だ、だけどっ」
綱吉は足を止めた。リボーン達の言う事も理解は出来る。理解は出来るが納得が出来ない。どうして名前まで!彼女を危険な目に遭わせない為に、今回の作戦には同行させなかったと言うのに…。
(名前さん!)
綱吉の脳裏に名前の笑顔が浮かんだ。
「何をしている!!」
その声にハッとする。
「自分の為すべき事を見失うなっ、沢田!」
『名前の行動に報いたければ殴り込みを成功させろ。それに雲雀の強さは知ってるだろ…ツナ』
ラルとリボーン。二人の声に耳を傾けながら綱吉は拳を握り締めた。
そうだ。知っている。知っているとも。雲雀の強さ何て自分達が嫌と言う程。だから名前を任せたんだ。託したんだ。彼の強さを信じているから。
『10代目!地上監視ポイントより信号を確認!コースクリア!――今なら皆さんの居るFハッチより、ルート312で敵アジトに突っ切れます!!』
それに勝機があるからこそ、雲雀は名前を連れて行った筈だ。そうでなければ勝ち目のない勝負に彼女を同行させるような、そんな無謀な真似をあの人がする訳がない。
「分かった!開けてくれっ、ジャンニーニ!!」
『了解!Fハッチ開口』
綱吉を先頭に、獄寺、山本、了平、ラル・ミルチは再び走り出した。
『行くぜ!!!』
宿敵“入江正一”を
目指して…。
(――雲雀さん、名前さんを頼みますっっ)
◇ ◇ ◇
ワンフレーズだけ歌を奏でた後、私はゆっくりと瞼を開ける。瞬間、四方を取り囲むミルフィオーレの隊員達が一人…また一人と、次々に倒れ込んで行く姿が目に入った。
「これが歌姫の力!」
「一瞬にしてこれだけの人数を“眠らせる”とは……何て能力だっ」
その力を間近で見た者からは驚愕の声が上がる。
今のは『眠りの歌』と言って、歌姫が持つ3つの能力の一つだ。歌声を聞いた相手を眠らせ、行動を停止させる…私の使える唯一の攻撃方法。
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