「それに対し、俺は……『名前の好きにすれば良い』と言って置いた」
「………」
ザワリ…。案の定、雲雀の纏う雰囲気が鋭いモノへと変わる。完全に怒らせてしまったようだ。
「勘違いするなよ、雲雀…。俺だって名前を敵陣に乗り込ませる事など本当はしたくない」
「……それなら、どうしてそんな勝手な事を彼女に言ったんだい?」
「そう、だな。“名前の為”――だろうか」
その返答に意味が分からないと雲雀は瞳を細めた。当然だ。名前を危険に晒す行為の何処が彼女の為になると言うんだか。了平自身上手く説明出来ないと言うのが正しい。
「まあ、つまり名前の意見を尊重してやりたかったと言う事だ。それにアイツを連れて行くか、否かの決断はボスの沢田に託すとも言っておいた。だから安心しろ!!」
「やはり君は日本語を理解していないようだね」
その言葉の何処に安心しろと言うんだい?雲雀は呆れたように溜息を零す。
「兎に角だ!俺は10年前の沢田に会ったばかり…。お前なら分かるだろ?沢田は“決心する事”が出来ると思うか?」
「……酒とか色々口実をつけていたけど、それを聞きたかったのか」
馬鹿にしたような雲雀の態度に了平は「ぐっ」と言葉を詰まらせる。
「…10年前の草食動物なら無理だろうね。…だが僅かとは言え、この世界で経験した事がきっかけとなれば――」
『――オレ、貴女の事が……好きみたいです』
ふと、雲雀の脳裏に“ある”光景が蘇った。
沢田綱吉が名前に向けて真っ直ぐに想いを伝えた、あの時の光景が…。
「雲雀?」
急に黙り込んでしまった雲雀に了平が声を掛ける。しかし彼は「…否」と首を横に振るだけ。
「恭さんっ」
――その時だ。突然廊下の方が慌ただしくなる。それと同時に草壁が血相を変えて顔を覗かせた。
「…騒がしいよ、哲」
「も、申し訳ありません。ですが緊急自体なんです!…クローム髑髏の容体が急変しました!!」
草壁の言葉に瞳を見開く了平。けれど雲雀は極めて冷静……だった。
「しかも、それだけではないんです!!」
その後に続く、
「傍で看病されていた名前さんまで共に倒れられたとの事なんです!」
――草壁の“その台詞”を聞くまでは…。
委ねられた 選択
(どうして名前までっ)
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