[携帯モード] [URL送信]
71.委ねられた 選択 **


「笹川さん!どうされたんですか?今日はもうお休みになられたかと…」

「嗚呼、これから雲雀の所に顔を出そうと思ってな。…だがその前にお前の事が気になったのだ」



そう言いながらこちらに歩み寄って来た笹川さんは、右手を伸ばし、クシャリと私の頭を撫でる。



「さっきの話を聞いて名前が悩まない訳がないと…そう思ってな。…色々考えていたのだろう?」

「……っ…」



図星を突かれて肩が揺れた。雲雀さんもそうだが、笹川さんにも私の考え何てお見通しらしい。この人に隠し事をしても無駄だ。そう悟った私は静かに口を開き始めた。





「笹川さん。私は…私は今回の作戦に参加させて頂けないのでしょうか」





一瞬、私の頭を撫でる彼の手が止まる。それから直ぐに「やはりな」と、苦笑混じりの声色が頭上から降り注いだ。



「…何故今回作戦に参加したいと思うのだ?自分がミルフィオーレの標的の一つである事は名前も分かっているだろう?」

「それは…分かっています。でも“標的の一つ”と言う点なら貴方や沢田さん達も同じの筈です」



私は傍らに立つ笹川さんを見上げた。心なしか彼の瞳が揺れているように感じる。きっと私の身を案じてくれているのだろう。とても優しい人だから…。でも今は彼の優しさに甘えては行けない。



「笹川さん…私、思うんです。幼い彼らが過去に戻る為とは言え、この世界の為に戦っているのに、この世界に生きる私が何もしない何て…。そんなの“可笑しい”と」



脳裏に過ぎるのは此処数日の修行で傷だらけになった沢田さん達の姿。彼らがボロボロになって頑張っている間、私は何をしていた?――何も……していないではないか。



「だから自分に出来る事をしたい。私もこの世界の為に戦いたいんです」



大好きなこの世界の為に。そして大切な貴方達の為に戦いたいと思う事は間違っていますか…?
私は真っ直ぐに笹川さんの瞳を見つめる。暫しの間二人で見つめ合った後、先に動いたのは――笹川さんの方だった。



「……ならば、お前の好きにすると良い…」

「ぇ」



予想外の返答に私は瞳を丸くする。そんな私を見た笹川さんはワハハと豪快な笑い声を上げた。


「何だその反応は?反対されると思ったのか?」

「……はい」



素直に頷くと、クシャクシャクシャ。更に激しく頭を撫でられる。


[←][→]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!