[携帯モード] [URL送信]
69.霧の真実


「……何してるの?」



縁側に座り、日本風の庭を眺めていると、突然後ろから声を掛けられた。私に声を掛けたのはこの屋敷…ではなく、アジトの主、雲雀恭弥さんだ。



「いえ。素敵なお庭だな、と思って…。何だか此処が地下だと言う事を忘れてしまいそうです」



そう言って私は再び庭に視線を戻す。こうして綺麗なものを眺めていれば、少しは気晴らしになるかと思ったが…そう上手くは行かないみたい。



「触るな!!!」




何度も頭の中で繰り返される獄寺さんの言葉。振り解かれた右腕よりも、心の方が…痛かった。

私は一体何をしてしまったのだろうか。思い当たる節が全くない。でも理由もなく獄寺さんがあんなに怒る筈がないし…。私は小さく溜息を零す。



「何かあったのかい」



傍らに立ち、同じように庭を眺める雲雀さんがそう訊ねて来た。獄寺さんとの事を雲雀さんに話す訳にはいかない。私は「……何も…」と言ってフルリと首を横に振る。



「そう」



私の嘘なんて雲雀さんにはお見通しだと思う。でも彼はそれ以上何も訊かずに、ただ傍に居てくれた。それだけで気持ちが浮上して来るようだ。



「……ありがとうございます。雲雀さん…」

「…何の事?」

「ふふ、何でしょう。何となく雲雀さんにお礼が言いたくなったんです」

「…変な子だね…君は」



雲雀さんは呆れたように肩を竦め、私の頭を一撫でしてから部屋の中へと戻って行く。撫でられた箇所に手を添えながら、私は更に笑みを零した。

そうだ。落ち込んでいるだけでは何の解決にもならない。理由をきちんと訊かないと…。獄寺さんに嫌わようが、疎まれようが、このままでは私自身が納得できないもの!



「おや?名前さん」



そんな時、廊下の向こうから雲雀さんの部下の草壁さんがやって来るのが見えた。私は慌てて立ち上がり「おはようございます」と頭を下げる。



「おはようございます。此方においででしたか」

「は、はい…」


流石にボンゴレのアジト(向こう)に居ずらかったので、此方に逃げてきました…とは言い難い。


「恭さんは中に?」

「はい。いらっしゃいます。あのお仕事の話ですか?それなら私は――」

「…別に構わないよ。君も聞いて行くと良い」



私の言葉を遮るように部屋の中から雲雀さんの声が響く。それを聞いた草壁さんは「中へどうぞ」と私を招き入れた。




◇ ◇ ◇


「恭さん、マークしていた例の男が動き出したとの連絡がイタリアから」


[→]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!