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66.勝利の女神 ***


「だから扱いきれず、ふかし過ぎたり、つんのめったりしちまう。……先代達がツナに授けた新兵器ってのは、とんだじゃじゃ馬って訳だな」

「リボーン何を嬉しそうに言っている!まだとても実践で使える代物ではないと言う事だぞっ」

「…嗚呼。このままだと距離感もタイミングも掴めねぇだろーしな」



二人の話に耳を傾けながら、私は傷だらけの沢田さんを見つめる。
彼は一体どうするつもりなのだろう。雲雀さんは炎をコントロール出来ずにどうにか出来る相手ではないと言うのに…。



「ねえ君、僕が言った事を覚えてる?」

「勝つしかない…だろ」

「…そう。勝つしかないんだ。…勝利の女神は一人にしか微笑まない。…名前は、僕と君…どちらに微笑むだろうね?」

「………」



二人の間に張り詰めた空気が漂う。一瞬の沈黙の後、沢田さんはグッと拳を握り締め、勝負に出た。超高速での一発勝負。しかし、雲雀さん程の人に容易に突っ込めば、カウンターの餌食に…!



「がはっ」



そう思った時には時既に遅し。雲雀さんの振り切ったトンファーが彼を直撃。直後、吹き飛ばされた沢田さんは床に激突した。衝撃で床は凹み、灰色の煙が舞い上がる…。



「さ、わだ…さん」



私は床に倒れたままピクリとも動かない沢田さんを見つめた。ラルさんの腕を解き、立ち上がろうとするが上手く立てない。そんな私をまたラルさんが支えてくれる。



「君にはがっかりだ」



落胆した雲雀さんの声。



「弱い草食動物には興味ないよ。直接手を下す気にもならない……匣で」



と言いながら、雲雀さんが懐(ふところ)に手を忍ばせた瞬間、ハッとしたように動きを止めた。それから倒れている沢田さんを見て瞳を見開く。

一体何が…?そう思い、私も沢田さんに視線を移すと、彼の手には…。



「雲雀さんの匣!!」

「まさか、ヒットした時に奪ったのか!?」



驚く私とラルさん。そんな私達を余所に、沢田さんはゆらりと起き上がるとリングに小さな炎を灯した。そうか。7種類の属性の中で大空は唯一全ての匣を開ける事が出来るから、だから…!



「…頼む…」



沢田さんが囁き…匣に炎を注入した瞬間、中から大空の炎を纏ったハリネズミが飛び出して来る。そのハリネズミは物凄いスピードで雲雀さんへと向かって行き――。



「逃げて雲雀さん!!」



咄嗟に声を上げる私。けれど雲雀さんの顔には笑みが浮かび、何とその手には同じ匣がもう一つ。


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