「この闘いにルールはない。君が選べるのは僕に勝つか…死ぬだけだ」
「、勝つさ」
「…フッ…来なよ…」
雲雀さんは本気だ。本気で沢田さんを殺そうとしている。私はギュッと唇を噛み締め、ラル・ミルチさんにしがみつく。
「……、」
沢田さんは後ろにグローブを構え、炎を放つと同時に――姿を消した!否、余りのスピードに消えたように見えたのだ。
しかし、そんな攻撃も雲雀さんには無効。彼はタイミングを見計らって床を蹴ると、突進して来た沢田さんの頭部に手を着き、軽やかに交わす。
攻撃を交わされた沢田さんはそのまま壁に激突――と思われた寸前、グルッと回転して体勢を立て直した。その衝撃で壁面がボコリと大破する。
「……く、…」
沢田さんは再び攻撃体勢に入ると、グッとグローブを握り締め、炎の出力を大きくした。何と言う凄まじい炎。ラルさんからも驚愕の声が上がる。
直後、ガッと壁を蹴りつけ、再度雲雀さんへと向かって行く沢田さん。当の雲雀さんはゆっくりと振り返り、動く事なく迫って来た沢田さんを…
「…ぐぁっ、」
――返り討ちにした。
雲雀さんのトンファーが沢田さんの腹部にのめり込む。衝撃で後ろに飛ばされた沢田さんはグローブの力を上手く使い、空中で停止。――しかし、
「身体が流れてるよ」
トンファーを構えた雲雀さんが背後に迫って。
『ヤられる!』本人もそう感じたのだろう。雲雀さんの攻撃を回避する為、沢田さんが両手の炎を強めた、次の瞬間――。
ドオォオン!
彼の身体は凄まじい勢いで床に激突した。
「沢田さあぁあん!!」
叫ぶ私。雲雀さんは床に倒れた沢田さんを詰まらなそうに見下ろしている。
「何の真似だい?君…本気で闘う気はあるの」
どうして、どうして自滅なんて。大空の炎の純度が上がり、7属性随一と言われる『推進力』も上がっている筈なのに…。
「どうやら“Ver.V.R”ってのは、随分ピーキーな特性らしいな…」
リボーンさんが呟く。
「ピーキーですか?」
「嗚呼。ツナの顔を見るとアイツの思い通りに炎が出せてねーみてーだ」
リボーンさんが言うには、ノーマルの]グローブが沢田さんの意志に比例して、滑らかに出力を上げて行くのに対し…。
Ver.V.Rではある地点から急にパワーが跳ね上がるのだろう…との事だ。
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