泣いてるじゃないか…彼女は。自分の所為で多くの人が犠牲になる事を悲しんでいるじゃないか!
『それが歌姫の“宿命”。そして……歌姫を守る為、我々ボンゴレに課せられた“使命”』
『……故に求めよ。歌姫を守る偉大な力を…』
涙を流す女性の姿が、名前さんの姿に重なる。あの人が泣いてる。それだけで胸が痛い。苦しい。張り裂けそうになる。
「…違、う…こんなのは守る何て――言わない」
『何?』
誰かを守るって事は“その人の全てを”守る事なんだ。涙も、笑顔も、その人の全てを…。それなのに彼女を泣かせて。悲しませて。――守る何て偉そうな事を言うなっっ
『な、何だとっ』
オレはそんな忌まわしい力は要らない。こんな間違った歴史を繰り返してあの人を悲しませる位なら…オレが、オレがっ、
「オレがボンゴレをぶっ壊してやる――っっ」
オレは自分の力で名前さんを守ってみせる!
『――貴様の覚悟…しかと受け取った』
瞬間、何処からともなく男の声が響いた。ハッとして顔を上げると、目の前には、オレと同様、額に炎を灯した一人の男が立っている。おまけに先程までオレを取り囲んでいた人影は消え失せ、8人の人物が姿を現した。
その中にはオレも良く知る9代目の姿もあって…。まさか、この人達は――“歴代ボンゴレ”。
『リングに刻まれし、我らの時間。……栄えるも滅びるも好きにせよ。ボンゴレ]世(デーチモ)』
その人はオレに向かって右手を差し出す。その手には『T』のエンブレムが入ったグローブと自分とは比べ物にならない高純度の炎が灯っていた。
『お前を待っていた』
瞬間、その炎が大きくなる。同時にオレの身体を白い光が包み込んだ。光の元は床に浮かび上がるボンゴレのエンブレム。
『ボンゴレの証を此処に継承する。歌姫を……我らの宝を守ってくれ』
その人の言葉と共に、更に輝きを増す光。オレは静かに瞳を閉じた。瞼に浮かぶのは名前さんの笑顔…。……大丈夫。オレは必ずこの笑顔を守るよ。――だって気付いてしまったから…。自分の“本当の想いに”。
(…名前さん。オレは、貴女の事が――)
◇ ◇ ◇
綱吉を閉じ込めた球針態が突然輝き出す。それを目にした雲雀は口元を綻ばせ、同時に名前の身体を引き寄せた。
「…大人しくしてなよ」
「雲、雀…さん?」
「球針態が……壊れる」
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