「な、何!!??」
慌てて視線を向けると、先程まで上空の壁に突き刺さっていた丸い球体が床に落下していたのだ。
「“球針態”。絶対的遮断力を持った雲の炎を混合した密閉球体。…これを破壊する事は彼の腕力でも炎でも不可能だ」
雲雀さんは私の手首を離すと、球針態と呼ばれた球体に近付き、その側面に自身の手を沿える。
「密閉された内部の酸素量は限られている。早く脱出しないと…死ぬよ」
そして、中に閉じ込められて居る沢田さんに語り掛けるように囁いた。口元を…綻ばせながら…。
「ふざけんなっっ」
辺りを震わせる程の怒鳴り声を上げたのは――獄寺さんだ。
「てめー、久し振りに現れたと思えば10代目を殺す気か!出しやがれっ」
「弱者が土に帰るのは当然の事さ。……第一、沢田綱吉を“殺す理由”があっても“生かして置く理由”が僕にはない」
雲雀さんは本気だ。それは彼の目を見れば一目瞭然。でもどうして?何故こんな事を?雲雀さんの考えが理解出来なくて私はぎゅっと瞳を伏せた。
「…んじゃ、オレ達も修行を始めるか」
その言葉に顔を上げる。
「ま、待って下さいリボーンさん!このままじゃあ、10代目が…っっ」
「雲雀は…“ヤる”っつったら“ヤる”ぜ」
「分かってるぞ。だからこそ雲雀何だ。…歴代ボスが越えて来た試練には、混じり気のない本当の殺意が必要だからな」
“ボスの試練・本当の殺意”この悪夢のような未来に終止符を打つ為、その両者が今の沢田さんには必要不可欠なもの。
(……沢田さん…)
私は雲雀さんの隣に歩み寄ると、彼と同じように球針態の側面にそっと右手を沿えた。ドーン、ドーン。中から振動が伝わって来る。沢田さんが必死に抵抗している音だ。
「君は離れた方が良い」
雲雀さんが私にそう告げる。恐らく心配してくれているのだろう。けれど私は首を横に振った。
「良いんです。此処に……居させて下さい」
頑張っている貴方の傍に居たい。私に出来る事はこの位しかないから…。だから必死に祈りを捧げた。彼の無事を信じて。彼の帰還を信じて…。私は静かに瞳を閉じた。
≪綱吉side≫
「…ハァ…ハァ…」
この空間に閉じ込められてどの位の時間が経過しただろうか。必死に攻撃を仕掛けても、その全てを悉く弾かれてしまう。
[←][→]