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65.試練と継承


沢田さんの大空の炎と、雲雀さんの雲ハリネズミ。騒音を響かせながら二つの炎がぶつかり合う。
まるで花火のようなその光景を、私は瞳を揺らしながら見つめていた。



「10代目が押されてる」

「ヤベーんじゃねーか」



私の隣でその様子を傍観していた獄寺さんと山本さん。二人の焦った声に沢田さんを見上げると、勢いの増した雲雀さんの雲ハリネズミが沢田さんの力を圧倒していた。

しかし、それは本の一瞬。次の瞬間には沢田さんの纏(まとっ)た炎が大きくなり、逆に雲ハリネズミを押し返し始める。



「やった!!!」

「スゲー!押し返した」



歓喜の声を上げる二人。けれど、雲雀さんは違った。静かに瞳を伏せ、ふっと息を零す。その表情に見えたのは落胆の色。



「…赤ん坊から聞いた通りだ。…僕の知る10年後の君とは程遠いね…」

「何っっ」

「程遠いってアレでか」



獄寺さん達が驚くのも無理はない。確かに私の知る沢田さんは、もっと強い炎を灯していた。純度の高い“大空の炎”。
恐らく今の沢田さんでは10年後の彼の半分の力も出せていない筈だ。雲雀さんが言いたいのは多分、そう言う事だと思う。

そんな雲雀さんの言葉に、一瞬獄寺さんが何かを言い掛けたが、ラル・ミルチさんに制され、不本意そうに口を閉ざす。
その場に居る全員が、固唾を乗んで沢田さんの様子を見守っていた。



「………」



刹那。沢田さんがふっと瞳を閉じる。それと同時に彼の炎が不規則に瞬き始め、そして――。


パリン


雲ハリネズミを凍らせてしまった。“零地点突破・初代エディション”



「スゲー!!!」

「流石10代目!!!」



私も二人同様、ホッと安堵の息を吐いた。けれど「否、まだだ!」と言うラル・ミルチさんの言葉に再び顔を上げると、沢田さんの周りには“増殖”を始めた雲の炎が!



「…っく、」



物凄いスピードで増殖して行く炎。沢田さんも零地点突破・初代エディションで応戦するが、駄目。追い付かない!!



「沢田さぁあん!!!」



私の叫び声と同時に彼の身体は雲の炎に包まれ…残ったのは沢田さんを取り込んだ丸い球体のみ。



「沢田さんっっ」



咄嗟に駆け寄ろうとする私…。しかし手首を掴まれ、阻まれてしまう。私を止めたのは…。



「近寄らない方が良い」



雲雀さんだった。どうして…そう問い返そうと彼を振り向いた瞬間。背後で大きな物音が響く。


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あきゅろす。
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