「今日まで私達がして来た事も役に立つ筈よ」
「僕らは日本に居るミルフィオーレファミリーの情報集めをしていたんだ。ミルフィオーレには全部で17部隊あるんだけど、その中でもAランク以上の隊長は6名だけ。そして、その中の2人が日本を任されているんだ」
「γと入江正一か?」
ラルさんが訊ねる。その問い掛けにコクリと頷いたフゥ太君は、更に驚くべき事を口にしたのだ。
「入江正一は……日本支部に帰って来てる。強敵は直ぐ傍って訳さ」
「「!!」」
息を飲む沢田さんと私。そんな私達を見てビアンキさんは優しく微笑む。
「良いニュースはそれだけではないわ。――敵の日本支部アジトの入口を突き止めたの…」
「敵のアジトの入口!」
「本当ですかっ、ビアンキさん!フゥ太君!」
再びフゥ太君が頷く。
「灯台もと暗しだったんだよ。同じ並盛の地下……並盛駅地下のショッピングモールだよ。――その先に入江正一は居る」
「え?駅に地下なんて……あっ、そう言えば前にハルがそんな事を…」
静寂が私達を包み込んだ。この情報の意味は凄く大きい。敵アジトの入口が分かったと言う事は。
「これでこちらから攻め込める」
ラルさんの言う通り。ボンゴレ側から仕掛ける事が出来るのだ。でもそれにはリスクが有り過ぎる。彼らはこれまでの戦闘で酷い深手を負っているし、これでは戦う事もままならない。そんな私の思いを代弁するようにリボーンさんが口を開く。
「だが、今のオレ達の状態では成功はしないだろうな。γとの戦闘でミルフィオーレの本当の恐ろしさは良く分かった筈だ。入江正一もγと同じ隊長だって事は、そう簡単に倒せる相手じゃねぇぞ。……それに、敵はもう10年前のお前達の存在に気付いていると考えた方が良い。――そして、名前がこの並盛に居る事にもな…。奴らはボンゴレである“お前達を狩る為”……そして“歌姫である名前を捕らえる為”に血眼になってこのアジトを探している筈だ」
リボーンさんの漆黒の瞳が私を射抜いた。私は視線を逸らす事なく、じっと彼の瞳を見つめ返す。
「このヤバイ状況の中を生き延びて日本支部の入江正一を倒せるかどうかは、ツナ達が短時間で、どれだけ強くなれるかに掛かってるんだぞ」
「…短期間で…強く…」
「守護者の情報収集は僕らがするよ。……だからツナ兄は自分の修行にだけ、専念してよ」
フゥ太君に同意するようにジャンニーニさんとビアンキさんも大きく頷いていた。私は沢田さんの顔をそっと覗き見る。
「有難う…そうする」
変わり出す 未来
(そう告げた沢田さんは…私の良く知る10年後の彼と同じ顔をしていた)
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