沢田さんの合図と共に獄寺さんがパソコンを起動させる。ディスクをセットし、明るくなった画面に映し出された映像。それは白髪の…優しそうな一人の男性だった。この人がボンゴレ9代目。
『綱吉君。そして守護者の諸君。先ずは君達に謝らなければならない。……今まで歌姫の事を黙っていて済まなかったね。本来、歌姫の話は綱吉君がボンゴレを継ぐと決まった時点で絶対に話さなければならない重大な話だったんだ。…しかし私は“ある事”からそれを躊躇い、今まで話す事が出来なかった。…まあそれは“先代歌姫”との約束でもあったのだがね』
9代目は寂しげに微笑む。
『歌姫と言うのは、とても大きな使命を背負う。周りの人間には計り知れないとても大きな使命をね…。先代歌姫はそれを君に背負わせたくはなかったんだよ。彼女は――千歳は君の幸せを心から願っていたからね』
“千歳”聞き覚えのある名前に肩が震えた。だって、その名前は……。
『君ならもう分かるだろう名前さん。そう。先代歌姫の名は…名字千歳』
名字千歳。
私の――“祖母の名”。
祖母が、先代歌姫?
『千歳は君に歌姫を継がせる事を躊躇っていた。…けれど、歌姫を継ぐか否かは君自身が決める事だ。だから私達は運命に委ねる事にした。そしてその運命に導かれるように君は彼らと出会った。君が今、彼らの傍に居る事が……その証だ』
まるで私の表情が見えるかのように、9代目は穏やかに微笑む。その表情を見ていると無性に泣きたくなるのは…何故?
『分からない事ばかりで不安もあるだろう。けれど、その為に7人の守護者が存在するんだ。彼らが必ず君を守るよ。だから何も心配する事はない。――名字名前さん。君が“10代目歌姫”だ』
プツリと途切れる映像。真っ黒になった画面とは裏腹に私の頭は真っ白になっていた。そして気付く。とても重大な事に。
「……ら…、…ない」
「名前?」
私の態度が可笑しい事に気付いたリボーンさんがそっと声を掛ける。でも私は必死に頭を振って。
「ごめんなさいっっ」
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