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62.不機嫌な 理由 ***


「獄寺さんと山本さんですが命に別状はありません。――しかし思いの外、外傷が酷く暫く戦闘は避けた方が良いかと…」

「ふーん」



特に彼らに興味はないと、雲雀は名前の髪を優しく撫で続ける。
けれど不意に何かを思い出したように顔を上げ、草壁へと視線を移した。



「…所であの男はどうなったの?…僕が咬み殺した雷狐の匣を使う彼」

「電光のγでしたら我々が退散した後、駆けつけたミルフィオーレの人間が連れ帰ったようです」

「……そう…。もう下がって良いよ、哲」



珍しいな、雲雀が負けた相手を気にする何て…。小さな疑問を抱きながら雲雀を盗み見るが、相変もわらず名前の髪を撫でる手は止まらない。けれど雲雀の纏った雰囲気が少しだけ鋭くなっている事に草壁は気付いていた。しかし、それにも気付かぬ振りをして、草壁は雲雀の部屋を後にする。

深々と一礼し、襖を閉める直前、雲雀の口から、



「…やはり、彼は殺しておけば良かったかな」



物騒な台詞が聞こえて来た事も――、聞かなかった事にしておこう。



不機嫌な 理由


(…君を抱き上げた時、微かにあの男の残り香を感じたんだ。――だから暫くは僕の元に居て貰うよ…。君からあの男の香りが消えて、僕一色に……染まるまではね)


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