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62.不機嫌な 理由 **


そう考えた私は、雲雀さんの腕の中で静かに瞳を閉じた。――未だに安否の分からない二人の無事を、祈りながら…。



(獄寺さん、山本さん。必ず無事でいて下さい)










≪草壁side≫


「恭さん、失礼します」



電光のγとの壮絶な戦いで、意識不明となった獄寺隼人と山本武…。

早急な治療が必要とされた両名をボンゴレアジトに送り届け、報告の為に雲雀の部屋を訪れた草壁哲矢は、襖を開けた瞬間――言葉を失った。



「…ん?嗚呼、哲か」

「………」

「どうかしたのかい?」



どうかしたの…はこちらの台詞です。そう喉まで出掛かった言葉を草壁は寸前の所で飲み込む。

襖を開けた瞬間、彼の目に飛び込んで来たのは、雲雀の膝を枕に穏やかに眠る名前の姿だった。

確か彼女は雲雀がボンゴレのアジトまで送り届けた筈…と言うか、送り届ける予定だった筈だ。
それなのに何故此処に…?それも雲雀の膝で眠っているのだろうか。



「…恭さん、一つお聞きしても宜しいですか?」

「何?」

「どうして歌姫……名前さんがこちらに?」

「……嗚呼、抱いて運ぶ途中、泣き疲れて眠ってしまったみたいでね」



ずっと気を張っていたみたいだし、それにあれだけ泣けば当然だよ…と雲雀は名前の髪を撫でる。
そう話す雲雀の表情は普段の彼からは想像出来ない程、とても穏やかなモノで草壁は心底驚いた。



「……それに、気に入らなかったから…」



小さく呟かれた言葉に「何がですか?」と聞き返そうした草壁だったが、彼は再び寸前の所で止める。訊かない方が身の為だと判断したからだ。
長年の付き合いで分かる……と言うよりも、雲雀を見れば明白だろう。



(あんな表情を見せるのは六道骸が関わった時だけだと思っていたが…)



例外もあったんだなと草壁は苦笑を洩らした。



「…それで何?報告があって来たんでしょう」



雲雀に言われて気付く。そうだ、忘れていた。


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