「名前さん!」
激しい戦いが終わり、静まり返った境内に聞き覚えのある声が響く。
「遅過ぎるよ、君達」
雲雀さんの声と同時に後ろを振り返ると、そこには息を乱し、こちらに走り寄る沢田さんとラルさんの姿があった。
恐らく、さっきの爆発音を聞きつけて、駆けつけてくれたのだろう。
「…何してたんだい。……沢田綱吉…」
「ひ、雲雀さん!!!」
「…山本武と獄寺隼人は、その林の中だ」
そう言って二人の居場所を伝える雲雀さん。
境内に倒れている二人を見るなり、二人の名前を呼びながら沢田さんは慌てて駆け出した。私も急いでその後を追い掛けようとしたのだけど、
「…君は駄目だよ」
傍に居た雲雀さんに止められてしまう。
「どうしてですか!私もお二人の所へ…っ」
「…その必要はない」
「雲雀さん!!!」
必要ないだ何て、そんな言い方あんまりだ!!
悲しさの余り、再び涙が溢れそうになる。
「…泣いても無駄だよ。君は直ぐに連れて帰る」
一瞬、不快そうに眉をひそめた雲雀さんだったけれど、言葉と同時に私をひょいと抱き上げた。
「ひ、雲雀さん!!??」
余りに予想外な出来事に、一瞬思考が停止する。
けれど直ぐに状況を把握し、私は彼の腕の中でバタバタと暴れ始めた。
「降ろして下さいっ」
「……駄目だ」
必死に懇願(こんがん)しても、雲雀さんが首を縦に振る事はなく、沢田さん達との距離はどんどん遠ざかって行くばかり。
「雲雀さん!!!」
「彼らの事より君は自分の心配をした方が良い」
「私なら平気ですっ」
だから降ろして下さい…そう言おうとした言葉を私はグッと飲み込んだ。
何故なら、真剣な顔で私を見つめる雲雀さんを見てしまったから…。
ピタリと足を止め、真っ直ぐに私を見つめる雲雀さん。肩に回された右手に少しだけ力が籠もる。
「…大人しくしてなよ」
そう囁く雲雀さんの言葉に、私は小さく頷く事しか出来なかった。
だって今の表情を見れば分かるから。彼が本気で『怒っている』のだと。
これ以上雲雀さんを怒らせる訳にはいかない。
[←][→]