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61.雲 VS 雷 ****


私は反射的に顔を上げた。そして目の前に広がる光景を見て言葉を失う。



「――何……あれ?」



私の目に飛び込んで来たモノ…。それは無数の棘を張り巡らせた、巨大な丸い『球体』だった。
そしてその棘に串刺しにされたγさんと雷狐。



「言った筈だよ『逃がさない』って…」

「…っ……あの――“ハリネズミ”…、か」



ハリネズミ。その言葉で雲雀さんの開匣した匣の事を思い出す。
あれが雲雀さんの匣?



「そう。君の狐の炎を元に、彼がこれだけの針を発生させたんだ。まるで雲が大気中の塵を元に発生して広がるようにね」

「……そう、か…雲属性の匣の特徴は……っ…“増殖”…だった、な」



苦しげに声を絞り出すγさんの姿を、雲雀さんは静かに見上げていた。



「だが、こんな量の有機物を増殖させられる何て…、うちの雲の奴からは……聞いて…いない」



彼の腹部に突き刺さった針からポタリ、ポタリ…と赤い液体が流れ落ちる。余りに痛々しいその姿に、私は思わず視線を逸らしてしまった。



「ナンセンスな匣だぜ」

「素晴らしい力さ、故に興味深い…」



雲雀さんは手にした匣を眺め、そして再びγさんへと視線を戻す。



「さあ、終わるよ」



そう告げると雲雀さんは駆け出した。両手にトンファーを握り締めて…。
そんな彼の後ろ姿を私は見送る。ポタリポタリと涙を溢れさせながら…。

己の匣で作った板状の足場を颯爽と駆け上り、敵の目前まで迫る雲雀さん。握ったトンファーを大きく振り上げ、そして



「がはぁっ」



凄まじい一撃がγさんへと叩き込まれた。
大きく身体を仰け反らせ、落下していく長身。ドサリと音を立て地面に倒れ込んだ後、彼が再び起き上がる事はなかった。







「最後に一つだけ教えてあげるよ。僕は名前の泣き顔が苦手でね。彼女を泣かせた奴を見ると…」







この戦い勝利したのは、







「…ズタズタに――咬み殺したくなるんだ…」



雲 VS 雷


(勝者・雲雀恭弥)


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