「ぐはあっ」
雲雀さんの攻撃はバリアを貫き、トンファーがγさんの顔を強打した。
(硬度で勝る雷の炎を雲の炎で破った!!??)
反動で投げ飛ばされたγさんの身体が放物線を描いて地面に落下する。
ドサリ。鈍い音と同時に舞い上がる砂煙…。
「立ちなよ。上手くダメージを逃がしたね」
「、くっ…流石だ。最強って噂も本当らしいな」
笑みを浮かべ、ゆらりと立ち上がるγさん。けれどすぐさまキューを構え、厳しい表情を作ると、
「否、参ったな――楽しくなって来やがったぜ」
ガッとビリヤードの球を弾いた。球は雲雀さん目掛けて飛んで行くが、彼はそれを軽やかに交わし、再びγさんに向かって攻撃を仕掛ける。だが、
「!」
雲雀さんの動きがピタリと止まった。理由は恐らく彼の周りを包囲するビリヤードの球達。
不規則な動きを繰り返し、雲雀さんの動きを完全に封じている。
「生憎このショットの軌道には人が生きられるだけの隙間はないんだ」
「…へえ、それはどうかな?」
けれど雲雀さんは愉快そうに口元を綻ばせ、再び動き出した。その刹那、
「3番ボール!」
γさんの宣言通り、3番のボールが雲雀さんの構えたトンファーに命中。
「雲雀さん!!!」
「ビンゴ!」
「確かに全ては避け切れそうにない。……だから当たるのは“この一球”だけって決めたのさ」
(どういう…事?)
言葉の意味が分からず、呆然とする私…。
けれど雲雀さんも宣言通り、飛んで来る球を全て交わし、γさんとの距離を縮めて行った。
そう。彼は一瞬にして最低限のダメージで済むルートを見切ったのだ。
「もう逃がさないよ」
γさんの目前に迫った雲雀さんが勢い良くトンファーを振り切る。でも、
「――それとこれとは話が別だ」
彼はブーツに纏わせた雷の炎で上空へと回避した。そうだ、彼はあのブーツで空を飛べるんだ!
私は咄嗟に雲雀さんを見つめた。――しかし、彼は敵を見上げる事もなく、立ち尽くしたまま。
(雲雀…さん?)
急に不安が込み上げ、彼の名を呼ぼうと、口を開き掛けた瞬間だった。
「ぐっ、は!!――な、何だ……こりゃあ……」
上空で響いた呻き声。
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