私は夢を見ているのだろうか。でも今、目の前に立って居るのは間違いなく――雲雀恭弥さん。
「……思い出したぜ。お前はボンゴレ雲の守護者、雲雀恭弥だ」
「……だったら?」
「お前には内の諜報部も手を焼いててね、ボンゴレの敵か見方か…行動の真意が掴めないとさ」
私の右手は無意識の内に彼へと伸びていた。
けれど、それを阻むようにγさんの腕に力が籠もり、更に私を拘束する。
「だが最も有力な噂によれば――、このお姫様にご執心だとか…」
そして私の腰に腕を回すと、更に強く抱き締めた。まるで雲雀さんに見せつけるように…。
「確かボンゴレの守護者だけが歌姫と婚姻を結ぶ権利を持ってるそうじゃねーか。それが代々受け継がれて来た掟(おきて)だとか…。だからお前も守護者である事だけは否定しない。その権利を失っちまうからな。…そうだろ?雲の守護者さん」
「……どうかな?」
「フッ、否定はしない…か。――なら“肯定”と受け取らせて貰うぞ」
「…それにも答えるつもりはないな。僕は機嫌が悪いと言った筈だ…」
雲雀さんの返答にγさんの口角が吊り上がる。
「――やはり雲雀恭弥はボンゴレ側の人間だったと言う訳だな。大事なお姫様に手を出されたり、いざ仲間がヤられるとなれば、黙って見ては居られない。……だろ?」
「……それは違うよ」
雲雀さんは瞳を細めて、γさんを睨み付けた。
そして匣を取り出し…ボウッ。右の指に填めたリングに紫色の炎を灯す。
「僕が怒っているのは……“並盛の風紀が汚されている事”だ…」
バリバリバリ。
雲雀さんがリングに炎を灯したのと同時に横から鋭い電気音が響いた。
「風紀…まあ良いさ。敵の守護者の撃墜記録を更新するのは嬉しい限りだ。俺も男の子なんでね」
γさんの指に光る、緑のマーレリング。彼はそのリングに死ぬ気の炎を灯すと、再び匣を取り出し、炎を注入。開匣した。
飛び出して来たのは獄寺さん達との戦闘で凄まじい威力を見せた雷狐。
雷狐は一直線に雲雀さんへと向かって行くが、雲雀さんも同時に匣を開匣。雲の炎を纏(まと)った『何か』が凄まじい勢いで飛び出して来る。
ドォォォォン!!
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