二人の頭上に現れた一人の男性…。足下に雷の炎を点し、先程の男達と同様ブラックスペルの隊服を纏(まと)っいる。
「雨の守護者と嵐の守護者には間違いないようだが…、随分と写真より若い。否、若過ぎるな」
間違いない。この人がラル・ミルチさんが仰っていた――“電光のγ”
「ボンゴレってのは若返りの水でも飲んでんのか?まあ、良い。…だがお前らとやり合うと戦闘って言うより、お仕置きになっちまいそうだな」
電光のγは口元に笑みを浮かべながら、スッと静かに地面に降り立つ。
そんな敵の姿に獄寺さんはクッ…と唇を噛み締め、隣に立つ山本さんに小さな声で告げた。
「…この減らず口はオレが倒す。山本、おめーはアイツの傍に付いてろ」
「――アイツ、ねえ?…それはさっきから木の影に隠れている“誰か”の事を言ってんのか?」
「「!!!」」
瞬間、二人の肩がビクリと揺れる。その様子を見逃さなかった電光のγ…。彼はすう…と瞳を細めて、私が隠れている木の影へと視線を移した。
(――このまま隠れていても無駄だ…)
そう直感した私は、ゆっくりと足を踏み出す。
「ほう。アンタがボンゴレの歌姫、名字名前か」
「貴方はミルフィオーレ第三部隊・隊長――電光のγ…ですね」
「これはこれは…。お姫様に名前を覚えて貰っているとは光栄な事だ」
トクリ、トクリ。
先程まであんなに騒がしかった心音が、今は不思議と落ち着いていた。
私はそっと胸に手を宛て、静かに瞳を閉じる。
(――どうしてあんなに胸が騒いでいたのか、今なら良く分かる…)
きっと、この人と遭遇してしまうからだったんだ。私は知らず知らずの内に警報を鳴らしてくれた『自分の中の何か』に心からの感謝を述べる。
「アンタとはじっくり話をしたいんだが、――そこの二人がそうはさせてくれないらしいな」
「ったりめーだ!!!」
「どうせアンタもあの人の事狙ってんだろ?」
「まーな。そのお姫様を捕らえる事が、俺達に下された命なもんでな」
その返答を聞くなり、二人は私の元へ走り寄ると、武器を構え、守るように電光のγとの間に立ちはだかった。
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