指令室に飛び込んで来たのは、山本さんと同時に入れ替わったハルさんだった。だけど、様子が可笑しい。どうかしたんですか?――そう訊ねる前に、彼女はこう叫ぶ。
「大変です!!京子ちゃんが居ないんです!」
私は愕然とした。――京子さんが……居ない?
「書き置きがあったんです!『一度家にいってきます。ランボ君達のおやつを貰って来るね』て」
ハルさんはポケットからメモを取り出し、沢田さんに手渡す。そのメモを読みながら沢田さんは大きく瞳を見開いた。
「余程、了平の事が心配だったんだな…」
「どどどうしよう!!」
「落ち着け、沢田。雲の守護者の鳥からの救難信号が出ているんだ。今はどうするべきか、総合的に判断すべきだ」
「この場合、最優先事項は『京子を連れ戻す』事だな。次に『ヒバードの探索・及び調査』だ」
リボーンさんとラルさんの話を聞きながら、沢田さんがゴクリと息を飲む。私もぎゅっと胸の前で両手を握り締めた。
「笹川了平の妹がまだ敵に捕まっていないと仮定して…。出来れば戦闘は避けたい。敵に見つからぬよう、少数で動くのがベターだな」
「それはヒバード探索にも言える。やはり少人数で動いた方が良いっス」
「じゃあ、二手に分かれて、両方一遍にやるってのはどうだ?」
「そう上手く行くか、ど素人!10代目は怪我してんだっっ」
「…ならば、雲の守護者探しが後回しか?」
「いや。もし“SOS”が本当に雲雀からのだった場合、のんびりしてらんねーのは確かだ」
全員がどうすべきか話し合っている最中、私は再びモニターに視線を向けていた。周りを圧倒する強いリングの保持者γ。
何故だろう、ドクリ、ドクリ…と心音が騒いで治まらない。――凄く、嫌な予感がするのだ。
「じゃあオレも行く!京子ちゃんとヒバード、両方一緒に進めようっ」
沢田さんの声でハッと我に返る。私がぼんやりしていた間に、どうやら話が進んでいたらしい。
「10代目のお考えなら賛成っス!!」
「そうと決まれば準備開始だな♪」
「あのラル・ミルチさん。細かい作戦とか一緒に考えてくれませんか?」
「…良かろう…」
ドク、ドク、ドク。
心音が更に激しくなる。
…このまま彼らを行かせてはいけない!先程まで感じていた『予感』が『確信』へと変わって行き、気付いた時には…
「――その作戦、私も参加させて下さいっっ」
私は、そう叫んでいた。
小さな 不安
(確かに私は無力です。だけど、私にしか出来ない事だってあるの!)
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