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58.小さな 不安 ***


指令室に飛び込んで来たのは、山本さんと同時に入れ替わったハルさんだった。だけど、様子が可笑しい。どうかしたんですか?――そう訊ねる前に、彼女はこう叫ぶ。



「大変です!!京子ちゃんが居ないんです!」



私は愕然とした。――京子さんが……居ない?



「書き置きがあったんです!『一度家にいってきます。ランボ君達のおやつを貰って来るね』て」



ハルさんはポケットからメモを取り出し、沢田さんに手渡す。そのメモを読みながら沢田さんは大きく瞳を見開いた。



「余程、了平の事が心配だったんだな…」

「どどどうしよう!!」

「落ち着け、沢田。雲の守護者の鳥からの救難信号が出ているんだ。今はどうするべきか、総合的に判断すべきだ」

「この場合、最優先事項は『京子を連れ戻す』事だな。次に『ヒバードの探索・及び調査』だ」



リボーンさんとラルさんの話を聞きながら、沢田さんがゴクリと息を飲む。私もぎゅっと胸の前で両手を握り締めた。



「笹川了平の妹がまだ敵に捕まっていないと仮定して…。出来れば戦闘は避けたい。敵に見つからぬよう、少数で動くのがベターだな」

「それはヒバード探索にも言える。やはり少人数で動いた方が良いっス」

「じゃあ、二手に分かれて、両方一遍にやるってのはどうだ?」

「そう上手く行くか、ど素人!10代目は怪我してんだっっ」

「…ならば、雲の守護者探しが後回しか?」

「いや。もし“SOS”が本当に雲雀からのだった場合、のんびりしてらんねーのは確かだ」



全員がどうすべきか話し合っている最中、私は再びモニターに視線を向けていた。周りを圧倒する強いリングの保持者γ。

何故だろう、ドクリ、ドクリ…と心音が騒いで治まらない。――凄く、嫌な予感がするのだ。



「じゃあオレも行く!京子ちゃんとヒバード、両方一緒に進めようっ」



沢田さんの声でハッと我に返る。私がぼんやりしていた間に、どうやら話が進んでいたらしい。



「10代目のお考えなら賛成っス!!」

「そうと決まれば準備開始だな♪」

「あのラル・ミルチさん。細かい作戦とか一緒に考えてくれませんか?」

「…良かろう…」



ドク、ドク、ドク。


心音が更に激しくなる。
…このまま彼らを行かせてはいけない!先程まで感じていた『予感』が『確信』へと変わって行き、気付いた時には…



「――その作戦、私も参加させて下さいっっ」



私は、そう叫んでいた。



小さな 不安


(確かに私は無力です。だけど、私にしか出来ない事だってあるの!)


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あきゅろす。
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