[携帯モード] [URL送信]
57.霧の優しさ **


沢田さんも、リボーンさんも、獄寺さんも、山本さんも…私の知っている彼らは皆過去の姿と入れ替わってしまった。
自分を知っている人が周りからどんどん居なくなる。それは――とても寂しくて、恐い事だ。

だから私の事を知っている貴方の傍に、このまま居たいと思ってしまう。



「…骸さん、私――」



貴方の傍に居たいです。そう口にしようとした瞬間、ふわりと身体を優しく包み込まれた。



「大丈夫ですよ」

「――骸、さ…ん?」

「例え10年前の姿に代わろうと、彼らが沢田綱吉達本人である事に変わりはありません。――だから君が不安に感じる事など、何一つないんです」



背中に回された腕に力が籠もる。恥ずかしいと言う思いよりも、今は……素直に嬉しかった。



「ありがとうございます、骸さん…。――そうですよね、沢田さん達は沢田さん達ですよね」



例え中学生の姿に入れ替わろうと、彼らが彼らである事に変わりはない。どうしてその事に気付かなかったのだろう。皆さんが私を知らないのなら、また知り合えば良いんだ。初めて出会った、あの頃と同じように…。



「珍しいですね、名前が大人しく抱き締められたままだ何て…」

「夢の中…ですから」



照れ隠しに私からも、ぎゅうと抱き締め返す。



「クフフ。そうですか。それなら夢で会うのも…悪くはありませんね」



頭上から楽しそうな笑い声が響いて、私も釣られるように笑みを浮かべた。けれど、その笑い声が直ぐに止む。不思議に思って顔を上げると、



「もう時間のようだ」

「…え?」



骸さんの姿が徐々に消え掛かっていたのだ。私は直ぐに悟る。これは夢から覚める兆候なのだと。……待って、お願い。まだ目覚めないで!



「骸さん!今、貴方は何処に居るんですかっ」



この前、夢の中で彼と会った時からずっと疑問に思っていた事…。

どうして夢でしか会えないの?現実で貴方の身に何が起こっているの?

そう必死に叫ぶのに、骸さんは首を横に振るだけで何も答えてくれない。唯一答えてくれたのが、



「僕の情報なら、もう直君の耳にも入りますよ」



この一言だけだった。


[←][→]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!