ふわり、ふわり…。風が頬を撫でる感覚に、次第と意識が覚醒してゆく。
ふっと瞼を開けると、目の前には赤と青。二色のオッドアイが、心配そうに私を見つめていた。
「……骸、さん…」
どうして此処に?…何て、そんな分かり切った事を訊く気はない。少し無理をし過ぎた私を心配して、夢の中まで会いに来てくれたのだろう。
「“無理をし過ぎた”と言う事は、自分でも理解しているんですね」
「……すみません…」
歌姫の力は大量のエネルギーを使う。だから使用する際には十分に気を付けろ…とリボーンさんにも、コロネロさんにも良く注意されたモノだ。風さんには、余り使って欲しくないのですが…と言われた事もあったっけ。
それは歌姫の力を使えば私がどうなるか皆さん、ご存知だったからだ。
今では力のコントロールも多少は出来るようになり、最初の頃のように気を失う事もなくなった。けれど、それでも力を使った直後は立っている事もままならない状態になる。――もし、そんな状態で敵と遭遇してしまったら…?皆さんはそれを懸念していたのだ。
考えなしの行動は後々周りに迷惑を掛ける。だから避けるようにしていたのに…。今回ばかりは後先の事まで考えている余裕もなかった。過去から来た獄寺さん達を何としても守らなければ!その事しか頭になくて…。
気付いた時には炎の前に飛び出していたのだ。
「全く、君も無茶をする。上手く行ったから良かったようなものの、何かあったらどうするつもりだったんですか?」
確かに骸さんの言う通りだ。あの時、運良く獄寺さんのリングに炎が点ったから全員助かったけれど、もし、リングに炎が点らず、なおかつ匣すら持っていなかったら?
考えたたげで今更身体が震えて来る。恐ろしい位、偶然のような『幸運』が重なっていたんだ。
「本当に無事でよかった…。――ただでさえ今は君の傍に居られないんです。…余り僕を心配をさせないで下さい」
「………」
眉を寄せ、寂しげに微笑む彼を見ていると、胸がキュッと苦しくなる。
『傍に居られない』この前夢で会った時も同じような事を仰っていた。
(どうして傍に居られないんですか?貴方は今、何処に居るんですか?)
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