「果てろ!!!!」
炎を放つ。さっきと同じような、でも明らかに威力の違う真っ赤な炎が発射された。「うわあぁあ」と言う叫び声が響き、炎が消えると、そこに敵の姿はなく、白い煙だけが立ち込めていた。
「……勝った…」
ジワジワと実感が込み上げて来る。オレは「おっしゃー!」とガッツポーズを決めて、武器フレームアローを匣に納めた。
その直後、工場の屋根を突き破って、もう一人の敵が飛び出して来る。
そいつの足下には10代目の技である『零地点突破・初代エディション』の形跡が…。どうやら10代目の方も片付いたらしい。流石10代目だ。――と成ると後の問題は…。
「おい、大丈夫かっ、しっかりしろ!!」
向こうで倒れてる他の奴らの事だ。山本達は既に目を覚まし、辺りの様子を窺っている。どうやら奴らは心配入らねーみてーだな。問題は今だ荒い呼吸を繰り返す名字…。
「名字!おい名字!!」
「…ハァ…ハァ、…」
長い黒髪が邪魔をして、今、名字がどんな顔をしてるのか、全然分からねー。それが、妙に……イライラするんだ。
何でこんなにイラついてんだよ。コイツがどうだろうとオレの知った事じゃねーだろ。こんな女、山本達に任せて、オレは10代目のお傍に…っ
「……、」
そう思うのに、身体が此処から動かねー。
「何なんだよ、お前」
「…獄…寺、さ――」
苦しそうに名前を呼ばれた瞬間、オレは――名字を抱き上げていた。
山本達にも声を掛け、早足で来た道を戻る。
「……くそ重てー…」
小さく呟いた悪態は、通り過ぎる風と共に掻き消されて行った。
戸惑う 心
(“10代目以外”を優先する何て…初めてだ)
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