[携帯モード] [URL送信]
56.戸惑う 心

≪獄寺side≫


オレも、そして隣に居た名字も言葉を失った。嘘だろ。よりによって、



「ん?何処だ此処?」



こんなヤベー時に山本の奴まで『10年前』の姿と入れ替わっちまう何て!


ボン、ボン、ボフン。


しかも、最悪の事態はそれだけじゃねー。山本が入れ替わった直後、続けざまにイーピン、アホ牛、ハルまでもが入れ替わっちまいやがった!!
暫しの間、呆然と立ち尽くすオレと名字…。

だが、直ぐに事の重大さに気付いて同時に顔を上げる。上空では山本達の形(なり)が変わった事に唖然とする敵の姿…。



「…刀の奴の形が変わった?――まあ、良いや。兄貴が戻る前に、ケリをつけさせて貰うぜ!」



くそっ、このままじゃあ此処に居る全員全滅だ!



「良いかお前らっ、良く聞け!」

「あ〜、獄寺さん!!探してたんですよ〜」

「お、獄寺!何してんだ?こんな所で♪――ん?誰だ?隣の姉ちゃん?」

「ンな事は後で良いから走れ!!じゃねーと――」



瞬間、背後で動く気配。ハッと後ろを振り返ると、敵が武器を振り上げているのが目に入って。



「逃がさないねっっ」



しまった!!…そう思った時には赤い炎が目の前まで迫り、ドーンと言う爆発音が鳴り響いていた。




◇ ◇ ◇


確かにオレ達は攻撃された…筈だった。なのに全く痛みを感じない。オレは唯一庇う事が出来たイーピンを抱き締めながら、背後を振り返る。

少し離れた場所に、ハルとアホ牛を庇って倒れている山本の姿が見えた。
全員無事だった事にホッと安堵の息を零した刹那。山本の向こうに見えた『ある人物』の後ろ姿に…、オレは絶句する。



「……名字、」



まるでオレ達を庇うようなその姿。スーと全身の血の気が引いて行く。



「名字!!!」



咄嗟に駆け寄ろうとしたオレだったが、ふとある違和感に気付く。あんな攻撃を受けていながら、名字の身体には傷一つ付いていなかったのだ。



「……く、ぅ」



疑問に思ったのも束の間。名字は苦しそうに呻き声を上げ、ガクリとその場に跪(ひざまず)いた。今度こそ、オレは名字に駆け寄る。


[←][→]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!