≪獄寺side≫
オレも、そして隣に居た名字も言葉を失った。嘘だろ。よりによって、
「ん?何処だ此処?」
こんなヤベー時に山本の奴まで『10年前』の姿と入れ替わっちまう何て!
ボン、ボン、ボフン。
しかも、最悪の事態はそれだけじゃねー。山本が入れ替わった直後、続けざまにイーピン、アホ牛、ハルまでもが入れ替わっちまいやがった!!
暫しの間、呆然と立ち尽くすオレと名字…。
だが、直ぐに事の重大さに気付いて同時に顔を上げる。上空では山本達の形(なり)が変わった事に唖然とする敵の姿…。
「…刀の奴の形が変わった?――まあ、良いや。兄貴が戻る前に、ケリをつけさせて貰うぜ!」
くそっ、このままじゃあ此処に居る全員全滅だ!
「良いかお前らっ、良く聞け!」
「あ〜、獄寺さん!!探してたんですよ〜」
「お、獄寺!何してんだ?こんな所で♪――ん?誰だ?隣の姉ちゃん?」
「ンな事は後で良いから走れ!!じゃねーと――」
瞬間、背後で動く気配。ハッと後ろを振り返ると、敵が武器を振り上げているのが目に入って。
「逃がさないねっっ」
しまった!!…そう思った時には赤い炎が目の前まで迫り、ドーンと言う爆発音が鳴り響いていた。
◇ ◇ ◇
確かにオレ達は攻撃された…筈だった。なのに全く痛みを感じない。オレは唯一庇う事が出来たイーピンを抱き締めながら、背後を振り返る。
少し離れた場所に、ハルとアホ牛を庇って倒れている山本の姿が見えた。
全員無事だった事にホッと安堵の息を零した刹那。山本の向こうに見えた『ある人物』の後ろ姿に…、オレは絶句する。
「……名字、」
まるでオレ達を庇うようなその姿。スーと全身の血の気が引いて行く。
「名字!!!」
咄嗟に駆け寄ろうとしたオレだったが、ふとある違和感に気付く。あんな攻撃を受けていながら、名字の身体には傷一つ付いていなかったのだ。
「……く、ぅ」
疑問に思ったのも束の間。名字は苦しそうに呻き声を上げ、ガクリとその場に跪(ひざまず)いた。今度こそ、オレは名字に駆け寄る。
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