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55.来援 雨の守護者 ***


背後で響いたイーピンちゃんの叫び声に全員が振り返る。安心するのはまだ早かったらしい。



「もしかしたらさっきの爆発で――っ」

「そ、そんな…っ」

「まだ決まってねーぜ!探しに行け、ツナっ」



山本さんに促され、沢田さんは慌てて走り出した。そんな彼を私は咄嗟に呼び止める。



「沢田さんっ」

「な、何!?」



一緒に行きます!…そう言い掛けた言葉を寸前の所で飲み込む。分かっているのだ。私が一緒に行った所で足手まといにしかならない事を…。



「……気を付けて…」

「うん!!名前さんも!」



だから見送る事に決めた。どんどん遠ざかって行く小さな背中を、ただただ祈るように……。



(沢田さん、ご無事で…。――京子さんを必ず見つけて下さいね)




◇ ◇ ◇


「兄貴!一人逃げるぜ」

「嗚呼、分かってる。…だが歌姫を見つけた以上俺達が優先するのはあの女を捕らえる事だ。他の奴は後回しだぞ、野猿」

「そ、そんな事オイラだって分かってるって!…だからって兄貴は手出すなよ!!あの女はオイラが捕まえるんだからよ!」

「分かった、待っててやるよ。――俺が他の連中を片付けるまではなっ」



敵の言葉にハッと振り返った時にはもう遅かった。私の真横を赤い炎が通り過ぎ、――ドォォン!



「うわあぁあ!」



沢田さんの足下で爆発した。彼の身体は軽々と吹き飛び、廃墟と化した工場の窓ガラスに激突。



「沢田あぁあん!!!」

「ツナっ!」

「10代目っ!!」



割れたガラスと共に沢田さんは建物の中へと落下して行く。彼の安否を気遣い、走り出そうとする私の前に、野猿という人物が立ちはだかった。



「何処へ行くんだ」

「――!!っ」

「言っただろ。アンタだけは逃がさない!絶対オイラが捕まえるっっ」



そう叫びながら、相手の腕が目の前に迫って来て…っ。――捕まる!
そう思った刹那、背後から腹部に腕を回され、グイッと引き寄せられた。



「それなら俺も言った筈だぜ…。――名前を渡す気はねーってなっ」



私を背後から抱き締めた人物…。山本さんだ。
彼は獄寺さんの元に下がるよう私に伝えると、目の前の相手と対峙する。


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