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55.来援 雨の守護者 **


太猿と呼ばれた男が、ニヤリと薄気味の悪い笑みを浮かべて私を見る。瞬間、ゾクリと悪寒を感じて私は一歩後ずさった。



「前言撤回だ、野猿。手は出さんつもりだったがな。下らん雑用任務に転がり込んだ久々の大物だ。…見逃す手はねー」

「ずりーぞ、兄貴!!あいつらはオイラのだ!他のは譲るからよっ」



“あいつら”とは山本さんと私の事だろうか。全く、勝手に人を所有物にしないで貰いたい。



「盛り上がってるトコ悪いーんだけど、俺はお前らにヤられる気も、名前を渡す気もねーんだわ」



そう言って私を背後に隠す山本さん…。そして、懐(ふところ)に手を忍ばせ、匣を取り出した。



「名前の事頼むぜ」



誰に言っているのだろうかと首を傾げると、背後に人の気配…。
沢田さんと獄寺さんだ。



「お前達、良く覚えとけ。リングにはこの匣ってのを開ける力がある」

「――あ、そうか!!コイツに開いてる穴はそうやって使うんだなっ」



獄寺さんも山本さんと同様、懐(ふところ)から匣を取り出すと、「お前ばかりに良い格好はさせないぜ」と言ってリングを匣に差し込む。…だが、



「何も起きねーぞ」



当然何も起きない。
それを見た山本さんは、ふっと口元に笑みを浮かべて、二人にリングを翳(かざ)して見せた。



「人間の身体ってのは血液だけでなく、目に見えない生命エネルギーが波動と成って駆け巡ってるんだ…。――波動は7種類あってな、リングは自分の素質と合致した波動が通ると、反応し、それを高密のエネルギーにして、生成する…」

「――それって!」

「そう」



ボッ…とリングに炎が灯る。青い、雨の炎。



「“死ぬ気の炎”だ」



瞬間、山本さんは匣を開匣した。彼の開けた匣から、雨の炎を纏(まと)った『何か』が飛び出し、それは一直線に敵に向かって飛んでゆく。



「何だ、このちっけーのは!――炎をっ、炎を消しやがる!!!」



『雨の鎮静』によって敵の炎が少しづつ消えてゆき、その様子を見ていた沢田さんと獄寺さんからは驚きの声が上がった。

山本さんが居れば大丈夫。この場に居る誰もがそう思った。…けれど、



「あれ!?――大変っ、京子さんが居ない!」


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あきゅろす。
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