「あ、あの…名前さんはアジトに残ってた方が良かったんじゃ…」
前を歩いていた沢田さんが心配そうに振り返る。
私は「いえ」と頭を振って、彼に笑顔を向けた。
「私だけアジトに残って居ても、皆さんの事が心配でじっとしていられなかったと思いますから」
「で、でも…っ」
「10代目が気にする必要はありませんよ。何か合っても、付いて来たこの女の所為なんスから」
「ご、獄寺君!」
「良いんです、沢田さん。本当の事ですから」
中学生の姿でも獄寺さんは獄寺さんだ。相変わらず手厳しい。でもそれが少しだけ嬉しかったりもする。まるで何時もの彼を見ているようで…。
「それより山本。ボンゴレリングが希望ってどう言う事だよ。失ったとか言ってたじゃねーか。何でボンゴレリングがこの時代にねーんだよ!!」
「ん?…嗚呼その話な。大分前にリングを砕いて捨てちまったんだ」
山本さんの言葉に「捨てた!?」と声を揃える沢田さんと獄寺さん。誰がそんな事をしたのか…と驚く二人に、山本さんはゆっくりと振り返り、更に驚かせる事を口にした。
「うちのボスさ」
「そ、それってっ」
「10代目がー!!!!」
当然の反応と言えば、当然の反応だろう。私自身、沢田さんから『リングを壊す』と聞かされた時は物凄く驚いたもの。
「守護者には反対する奴も居たんだが、ツナの奴、譲らなくてな…」
「『もう決めた』の一点張りでしたからね…」
「オレ何でそんな事を?」
「ハハハ。お前にも分かんねーか…」
山本さんは再び歩き出す。
「ツナがボンゴレリングの破棄を口にするようになったのは、マフィア間でリングと歌姫の奪い合いが始まった頃なんだ」
「リングと…歌姫?」
「何だその歌姫って」
「ん?嗚呼そっか。お前達は知らないんだったな。歌姫なら傍に居るぜ。お前達の直ぐ後ろにな」
二人が「まさか!」と言う顔をして私を振り返る。こう言う時はどう反応したら良いのか…。
取り敢えず、ペコリとお辞儀をしてみたのだけど、彼らは大きく瞳を見開いたままだった。
「――…」
その時だ。不意に前を歩いていた山本さんの足が止まる。どうしたのか訊ねようとした瞬間、
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