「俺こそ悪ぃー…。名前の気持ちに気付いてやれなくて…。――ツナ達の事、ずっと自分の所為だと思ってたんだな…」
「………」
何も答えない私を見て山本さん寂しげに微笑む。
「バカだな、名前は…。何で自分の所為だと思うんだよ。誰一人そんな風に思ってないのにさ。勿論……ツナだって」
「…で…も、私が――」
「『私が』――何だよ?お前自身が何をしたんだ?何かしたのか?」
一瞬の沈黙の後、私はふるりと首を振った。
「だろ?お前は何もしちゃいないんだ。アイツらが……ミルフィオーレが勝手に歌姫(お前)を欲しがって、勝手に奪おうとしただけ。それだけだ」
だからお前の所為じゃない…。山本さんは何度もそう繰り返してくれた。
「それにもしこの時代の獄寺が居たら『何でてめーの所為に成るんだよ!自惚れてんじゃねーっ』て、怒鳴られるぜ?」
「………」
確かに獄寺さんなら言いそうだ…。その姿が容易に想像出来て、私はクスリと笑みを零した。
「――やっぱお前は笑ってる方が可愛いな」
わしゃわしゃと私の髪を撫でる山本さん。
心がポッと温かくなる。
「ありがとうございます。山本さん。――もう平気です。もう絶対“全部自分の所為”だとか、そんなバカみたいな事…思ったりしませんから」
「……そっか…」
山本さんはホッと息を吐いて安心したように微笑んだ。さらり、さらりと規則正しく髪を撫でられ、次第に瞼が重くなる。
「良いぜ。もう少し寝てろよ。名前が眠るまで此処に居てやるからさ…」
「…やま…と、さ――」
その心地良さに、もう目を開けている事が出来なくて…。私は彼の名を呼びながら、深い眠りへと落ちて行ったのだった。
もう、泣かない
(貴方が傍に居てくれて、本当に良かった…)
[←][→]