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53.もう、泣かない **


「俺こそ悪ぃー…。名前の気持ちに気付いてやれなくて…。――ツナ達の事、ずっと自分の所為だと思ってたんだな…」

「………」



何も答えない私を見て山本さん寂しげに微笑む。



「バカだな、名前は…。何で自分の所為だと思うんだよ。誰一人そんな風に思ってないのにさ。勿論……ツナだって」

「…で…も、私が――」

「『私が』――何だよ?お前自身が何をしたんだ?何かしたのか?」



一瞬の沈黙の後、私はふるりと首を振った。



「だろ?お前は何もしちゃいないんだ。アイツらが……ミルフィオーレが勝手に歌姫(お前)を欲しがって、勝手に奪おうとしただけ。それだけだ」



だからお前の所為じゃない…。山本さんは何度もそう繰り返してくれた。



「それにもしこの時代の獄寺が居たら『何でてめーの所為に成るんだよ!自惚れてんじゃねーっ』て、怒鳴られるぜ?」

「………」



確かに獄寺さんなら言いそうだ…。その姿が容易に想像出来て、私はクスリと笑みを零した。




「――やっぱお前は笑ってる方が可愛いな」





わしゃわしゃと私の髪を撫でる山本さん。
心がポッと温かくなる。



「ありがとうございます。山本さん。――もう平気です。もう絶対“全部自分の所為”だとか、そんなバカみたいな事…思ったりしませんから」

「……そっか…」



山本さんはホッと息を吐いて安心したように微笑んだ。さらり、さらりと規則正しく髪を撫でられ、次第に瞼が重くなる。



「良いぜ。もう少し寝てろよ。名前が眠るまで此処に居てやるからさ…」

「…やま…と、さ――」



その心地良さに、もう目を開けている事が出来なくて…。私は彼の名を呼びながら、深い眠りへと落ちて行ったのだった。



もう、泣かない


(貴方が傍に居てくれて、本当に良かった…)


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あきゅろす。
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