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53.もう、泣かない


懐かしい夢を見た。

みんなが居て。みんなが笑ってくれて…。それが嬉しくて…私も笑う。

そんな――幸せな夢。



どうしてこの幸せが消えてしまったんだろう。
どうしてこの幸せが壊されてしまったんだろう。





『貴女の所為じゃない』






もう一人の自分が囁く。





『貴女の所為で沢田さんは…殺されたんだよ』






そう。私の所為…。私の所為で、沢田さんも、リボーンさんも、そして多くの仲間も殺された。

『歌姫』なんて存在しなければ良かった。

『歌姫』なんて――消えてしまえば良いのに…。




◇ ◇ ◇


フッと意識が浮上する。目を開けると、目の前には見慣れない天井…。



(此処、何処だろう)



寝起きの頭で、必死に記憶を手繰り寄せる。



(――そっか。また倒れちゃったんだ…)



また皆さんに迷惑を掛けてしまった。その事が申し訳なくて…私は両手で顔を覆い隠そうとした。
けれど何故か右手が動かない。不思議に思って、顔を向けると――。





「やま、もと…さん」





私の手を握り締めたまま、傍らで眠る山本さんの姿がそこにあった。
痛くない程度に握り締められた右手。
恐らく、ずっとこうして居てくれのだろう。彼の優しさが嬉しくて、嬉しくて…再び涙が溢れた。





「また泣いてんのか」





握り締められた右手に、ぎゅっと力が籠もる。声の主は……、眠っていた筈の山本さんだった。



「あ、の……私――」

「話の途中でぶっ倒れたんだ。――お前、昼間も倒れたんだって?ツナと獄寺が心配してたぜ」

「…そう、ですか…」



やはり迷惑を掛けてしまったようだ。一体私は何をしているんだろう。何の役にも立てないのに迷惑ばかり掛けて…。



「ごめんなさい、山本さん…。私、迷惑をお掛けしてばかり…ですね」



つい本音が零れてしまう。これじゃあ本当に私なんか居ない方が増しだ。



「…そんな事ねーよ」



ふわり。山本さんの大きな手が私の頬に触れる。


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あきゅろす。
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