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52.ア ジ ト ****


「此処、並盛町ですよ」

「「ええー!/何ー!」」



見事に重なる二人の声。



「本当だぞ。――山本、モニターに映るか?」

「嗚呼」



壁に設置された大型のモニターに、外の様子が映し出される。暗くてよく見えないけれど、ある場所が映った瞬間二人は再び声を揃えた。



「「並中!!」」

「そうだぞ。――そして過去に戻れない以上、此処で起こっている事はお前達自身の問題だ」



リボーンさんの凛とした声に、二人はゴクリと息を飲んだ。私もぎゅっと手を握り締める。



「現在、全世界のボンゴレ側の重要拠点は同時に攻撃を受けている。――勿論この日本でも“ボンゴレ狩り”は進行中だ」

「お前達も見た筈だぞ。――ボンゴレマークの付いた“棺桶”を…」



私の脳裏に沢田さんの笑顔が浮かんだ。



「名前」




もう二度とみる事の出来ない、沢田さんの笑顔。私は唇を噛み締め、ぎゅう…と拳を握り締めた。


ガッ!!!
その刹那、低く鈍い音が部屋中に響き渡る。
驚き、顔を上げると、山本さんに殴りかかる獄寺さんの姿が見えた。



「てめーっっ、何してやがった!!!!何で10代目があんな事に…っっ」



山本さんの口元から赤い、血液が流れる。





「――すまない…」





辛そうに眉を歪める山本さん。殴られた事が辛いんじゃない。ボスを、仲間を、友人を…大切な人を守れなかった事が辛くて辛くて仕方ないのだ。



「てめー!!すまねーで済む訳ねーだろっっ」

「止めて下さい!!!!」





部屋に木霊する悲鳴。





「止めて…下さい…」



山本さんの前に立ち塞がり、ポロポロ涙を零す私を…獄寺さんは驚いたように見つめていた。



「山本さんは…悪くないんです――私が…、私が……いたから…」



私さえ居なければ…『歌姫』さえ存在しなければ……きっと、きっとこんな悲しい未来にならずに済んだのに――っっ



「ごめ……な、さい」



グラリと視界が揺れる。



「……ごめ……なさ………沢田……、さ――」

「…っ、名前!!!!」



身体の力が抜け、床に崩れ落ちる寸前、背後で山本さんの叫び声が聞こえた。そして、私の意識は……そこで途切れる。



ア ジ ト


(ごめんなさい)


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