「此処、並盛町ですよ」
「「ええー!/何ー!」」
見事に重なる二人の声。
「本当だぞ。――山本、モニターに映るか?」
「嗚呼」
壁に設置された大型のモニターに、外の様子が映し出される。暗くてよく見えないけれど、ある場所が映った瞬間二人は再び声を揃えた。
「「並中!!」」
「そうだぞ。――そして過去に戻れない以上、此処で起こっている事はお前達自身の問題だ」
リボーンさんの凛とした声に、二人はゴクリと息を飲んだ。私もぎゅっと手を握り締める。
「現在、全世界のボンゴレ側の重要拠点は同時に攻撃を受けている。――勿論この日本でも“ボンゴレ狩り”は進行中だ」
「お前達も見た筈だぞ。――ボンゴレマークの付いた“棺桶”を…」
私の脳裏に沢田さんの笑顔が浮かんだ。
「名前」
もう二度とみる事の出来ない、沢田さんの笑顔。私は唇を噛み締め、ぎゅう…と拳を握り締めた。
ガッ!!!
その刹那、低く鈍い音が部屋中に響き渡る。
驚き、顔を上げると、山本さんに殴りかかる獄寺さんの姿が見えた。
「てめーっっ、何してやがった!!!!何で10代目があんな事に…っっ」
山本さんの口元から赤い、血液が流れる。
「――すまない…」
辛そうに眉を歪める山本さん。殴られた事が辛いんじゃない。ボスを、仲間を、友人を…大切な人を守れなかった事が辛くて辛くて仕方ないのだ。
「てめー!!すまねーで済む訳ねーだろっっ」
「止めて下さい!!!!」
部屋に木霊する悲鳴。
「止めて…下さい…」
山本さんの前に立ち塞がり、ポロポロ涙を零す私を…獄寺さんは驚いたように見つめていた。
「山本さんは…悪くないんです――私が…、私が……いたから…」
私さえ居なければ…『歌姫』さえ存在しなければ……きっと、きっとこんな悲しい未来にならずに済んだのに――っっ
「ごめ……な、さい」
グラリと視界が揺れる。
「……ごめ……なさ………沢田……、さ――」
「…っ、名前!!!!」
身体の力が抜け、床に崩れ落ちる寸前、背後で山本さんの叫び声が聞こえた。そして、私の意識は……そこで途切れる。
ア ジ ト
(ごめんなさい)
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