「走らないのか?歩いていては朝まで掛かるぞ」
スローペースで森を歩いていると、痺れを切らしたラルさんが後方で楽しそうにお話をされていた山本さんを振り返った。
それに対し山本さんは「そっか」と呟いて私の傍に歩み寄って来る。
「言ってなかったな。お前の知ってるアジトの場所の情報はガセなんだ」
「ガセ?」
「悪ぃ。もうそろそろだな。――と、その前に、名前はこれを被ってろ」
そう言って山本さんは着ていたジャケットを脱ぎ、私の頭に被せてしまう。訳が分からず、ジャケット越しに彼を見上げると――、グイ。
「わあ///」
「俺から離れるなよ」
肩を抱き寄せられた。
「山本さん///何を…」
「防犯対策のカモフラージュを解く。――ツナ達は余所見をするなよ…。俺を見失わないように付いて来てくれ…」
次の瞬間。空からポツリと雨が降り始めた。始めは小さな音だったそれが、次第にザーと言う大きな音へと変わっていく。
私は山本さんに貸して頂いたジャケットのお陰で大丈夫でしたけど…、
「イテテテ!!何も見えねー…っ」
「ジャングルの雨みたいだ…っっ」
どうやら周りは相当凄い豪雨になっているようだ。ぎゅうと抱き締められたままの私には、さっぱり状況が分からない。
「や、山本さん!!何があったんですか??」
「心配ない。俺の匣を開匣しただけだ…」
「山本さんの匣…て、――あっ!雨属性の!!」
私がそう叫ぶと、急に目の前が明るくなる。
山本さんがジャケットを取ってくれたらしい。
「大丈夫だったか?」
「は、はい。私は…」
「そっか。…と、あいつらも呼んでやらねーとな…。――こっちだ」
山本さんが少し離れた場所で今だに雨に打たれている沢田さん達を呼んだ。一体何処に行くのだろうと後ろを振り返ると、
「この先が…アジト?」
「嗚呼、そうだ」
そこには地下に続く長い長い階段が続いていた。
◇ ◇ ◇
私達は階段を下りて、設置されたエレベーターに乗り込む。そして更に地下へと下りていった。
「この地下アジトはボンゴレの重要な拠点として建造中だったんだ」
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