「……名前…」
不意に誰かに呼ばれる。
「名前、どうかそんなに悲しまないで下さい」
この穏やかな話し方…。――もしかして、
「――骸、さん…?」
半信半疑で名前を呼ぶと彼は突然、私の前に現れた。まるで霧のように。
「お久し振りですね」
「どう、して――」
「僕が此処にいるのか……ですか?」
彼の問い掛けに私はコクリと頷いた。何故なら私は先程まで沢田さんや獄寺さん、ラル・ミルチさんと共に居たからだ。それなのに彼等の姿は何処にもない。一体何処へ?
「答えは簡単ですよ。此処が君の夢の中だから」
「私の…夢??」
「ええ。だからこうして名前に会いに来る事が出来たんです。――今の僕では、現実で君に会う事は出来ませんからね…」
最後の部分だけ、直接ではなく、心の中で語り掛けられた気がした。今のはどういう意味なんだろう。現実で私に会う事は出来ないって…。
その事を骸さんに問い返そうとした時だ。
「名前さん!!」
遠くで私の名を呼ぶ誰か声が聞こえて来た。
「どうやら、君はそろそろ目覚めなければ成らないようですね」
この夢から覚めれば、骸さんとは会えなくなる。
不意にそんな不安が込み上げて、私は縋(すが)るように彼を見上げた。
「そんな顔をしないで下さい。でなければ……このまま夢の中に君を繋ぎ止めて置きたくなる」
困ったように微笑む、骸さん…。別に彼を困らせたい訳じゃない。だけど、離れたくなかった。
「クフフ。大丈夫、また会いに来ますから…」
次第に覚醒していく意識。骸さんの声が、どんどん遠ざかって行く。
「君が辛い時・悲しい時には、何時でも僕を呼んで下さい…」
ふわりと頬を撫でられて涙が溢れた。夢の中だから感触なんて感じない。そう思っていたけど、
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