炎の効力が切れ、霧の炎で出来た檻から抜け出した獄寺さんは、直ぐさま沢田さんに駆け寄った。そして、傍に居た私をおもいきり睨み付ける。
「おいテメー!!ボンゴレで世話になってると言いながら、コイツとグルだったんだな…っっ」
「ち、違…」
「くそ、10代目の事騙しやがって…っ」
獄寺さんの目は完全に敵を見る目に変わっていた。どうしよう。何とかして誤解を解かないと。
「大丈夫だよ、獄寺君」
その言葉にハッとした。声の主は沢田さん。彼は恥ずかしそうに頬を掻いて、私に笑顔を向ける。
「名前さんは勿論…、それにこの人も……、敵じゃないと思う」
「沢田さん」
「オ、オレの感って結構当たるんです///あはは…。――だからさ、獄寺君もオレを信じてよ」
「じゅ、10代目が…そう――、仰るなら…」
沢田さんの一言で獄寺さんの不信感は一瞬で消え失せた。この二人の関係は今も昔も全く変わらない。強い“信頼の絆”で結ばれているんだ。
「派手に暴れ過ぎたな。このままでは奴らに見つかるのも時間の問題だ」
ラルさんは先程の戦闘で脱げたマントを再び身体に巻き付け、二人に何かを投げて寄越した。
「これをボンゴレリングに巻き付けろ。マモンチェーンと言って指輪の力を封印する鎖だ。――急いで此処を立ち去る」
「待って下さい、ラルさんっ!お二人は過去から来たんです!!だからこの世界の事、何も…」
分かっていない…そう彼女に詰め寄ろうとした時だ。一瞬、視界が揺れたように感じた。
(――あ、れ?)
「…名前?」
ラルさんが心配そうにこちらを見つめる。私は「何でもありません」と慌てて首を振った。
「と、兎に角、お二人に簡単な説明位は――」
「必要ない。付いて来れない奴は死んでくれた方が助かる。――オレには時間がないんだ」
「ラル、さん??」
「…何でもない。――知りたい事は目的地に着いてから調べるんだな」
彼女は踵(きびす)を返して一人で歩き出す。その背中を見つめながら私は「ぁ」と声を上げる。
「そうだアジト!」
「「アジト??」」
「はい!私、これからボンゴレのアジトに向かう途中だったんです!!」
笑顔で振り返ると、二人は驚いたように瞳を見開いていた。すると沢田さんが身体を乗り出す。
「あっ、リボーンもそこに居るんですか!?」
「そうですね!もしかしたらいらしてるかも…」
カサリ。不意にラル・ミルチさんが足を止める。
「やはり名前は何も聞かされていないのだな…」
「…ラル、さん?」
「コロネロ、バイパー、スカル…。最強の赤ん坊アルコバレーノ達は……皆“死んでいった”」
彼女の言葉に私は瞳を見開き、そして――、
「勿論リボーンも」
『期待してるぞボンゴレの…オレ達の“歌姫”』
「いない」
言葉を失った。
悲 愁
(頭が真っ白になる)
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