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49.悲 愁 **


私は木の上のラルさんを見た。けれど、



「オレを恨むな…死ね」



彼女は攻撃を止めない。どうして!?どうしてラル・ミルチさん…っっ



「10代目っ、こいつ何かヤバイっス!…に、逃げて下さいっっ」



獄寺さんに向かって弾丸が放たれる。



「獄寺さあぁあん!!!」



私の悲鳴が響いた直後、隣から懐かしい気配を感じた。驚き、振り返ると、そこに居たのは額にオレンジ色の炎を灯した、



「――さ、わだ…さん」



私の良く知るボンゴレ10代目・沢田綱吉だった。




◇ ◇ ◇


先程までのあどけない少年の姿はない。今、戦っているのは、間違いなく私の知っている“沢田綱吉”そのものだった。



(沢田、さん…だ)



懐かしさが込み上げて、目頭が熱くなる。でも今は思い出に浸っている場合ではない。彼女が匣を開匣する前に、この戦いを止めなければ…!



(この時代の戦い方を知らない沢田さんではラルさんに勝てません!)



しかし、時既に遅し。彼女は匣を開匣してしまった。炎の色は紫。雲属性の炎を纏(まと)った大きなムカデが沢田さんの身体を締め付ける。
瞬間、彼の身体から大量の炎が放出された。



「すげー!!流石10代目」



それを見た獄寺さんから歓喜の声が上がる。けれどラルさんの口元には笑みが浮かんでいた。



「気付よ。逆効果だ。お前は死ぬ気の炎を自分の意志で出しているんじゃない。無理矢理大気に放出させられてるのさ。炎で動く玩具によってな」

「…そん…、な」



彼女の言う通り、沢田さんの纏っていたオレンジの炎は徐々に小さくなってゆき、そして完全に力の抜けた彼の身体はそのまま地面へ倒れ込んだ。



「こんな初歩的なトラップに掛かるとは情けないな。ボンゴレ10代目」

「もう止めて下さい!」



私は咄嗟に駆け寄り、二人の間に割って入る。



「彼らがリングを使えない事は分かった筈です!だからもう良いでしょう?…ラルさんっっ」



涙を浮かべて訴えると、彼女は沢田さんに向けていた武器を納め、愛用の赤いゴーグルを外した。



「仕方ない。名前に免じてこれ位にしてやる。オレの名はラル・ミルチ」

「10代目!!お怪我はっ」

「う、うん。大丈夫」


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あきゅろす。
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