「奴さえ居なければ“白蘭”も、これ程には…」
「びゃく…らん?」
深刻な空気が流れる。
オレは不安で一杯だった。一体、10年後のこの世界。何が起きてんだ?
その時、不意にある事を思い出す。オレが飛ばされた先。そう。今、正に座っている場所…。
「次に念の為にですが」
「あのっ、一つだけ!凄く気になるんですけど…、何で10年後のオレ、此処に居たんですかっ」
二人がヒュッと息を飲むのが分かった。名前さんの顔が見る見る青ざめて行く。そんな顔は…見たくない。見たくないけど…でも知りたかった。
「何で…10年後のオレ、“棺桶”に…?」
彼女の頬を涙が伝う。
「……名前…」
「…分かって、います…。――でも…っ」
必死にそれを堪えようとする名前さん…。
そんな彼女の手を獄寺君がぎゅっと握り締める。
その光景を見た時だ。
チリッと、何かが焼けたような痛みを感じた。さっきまでとは明らかに違う、不快な痛み。繋がれた二人の手を見ると、それが更に大きくなる。
(何だろう、これ…)
痛む胸を押さえて、二人を見つめる。名前さんを気遣いながら、獄寺君が「そ、それは…」と口を動かした刹那――、
ボフン!!
辺りに桃色の煙が立ち込めた。え!ええ!?まさか、まさかこれって――
「10代目!!――…と、誰だ、この女っっ!!!」
煙が晴れ、目の前に現れたのは…オレの良く知る10年前の獄寺君だった。
未来へ…
(何で元の獄寺君が!)
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