≪綱吉side≫
ある日、10年バズーカに当たったリボーンが突然消えてしまった。
「何でリボーン帰って来ないんだ!?」
通常5分で戻る筈なのに、一日経っても帰って来ないアイツを心配したオレ――沢田綱吉は、詳しい事情を訊く為、大人ランボを呼び出そうとして、逆に10年バズーカに当たってしまったんだ!
◇ ◇ ◇
(――真っ暗だ…)
目を開けると、そこには一面に広がる……闇。辺りには咽せ返る程の花の香りが漂っていた。
オレは恐る恐る手を伸ばしてみる。すると、
(あっ、動いた!!)
簡単な程にその闇から抜け出す事が出来た。軽過ぎる“何か”を横にずらして身体を起こす。多分此処は10年後の世界。
「未来の自分と入れ替わったって事は…10年後のオレが此処に居たんだ」
取り敢えず場所の確認だと周りを見渡したオレだったけど、そこは緑ばかりが広がって居て、全く覚えのない場所だった。それにオレが今座っているこれって…棺桶?
「って、ええー!!??何でオレ棺桶に…っ」
ガサッ。
「!!」
パニックに陥っていたオレは突然響いた足音にビクリと肩を揺らす。
ガサッって何!?ガサッってえええーっ!!!!
自分が棺桶に入っていた事も気になるが、今は物音の正体を優先させなければ…。此処は森の中。危険な猛獣とかの可能性も無い訳じゃない!
オレはそうでない事を祈りながら、恐る恐る音のした方を振り返る。
――でも、そこに居たのは、両手に花束を抱え、腰まである長い黒髪を靡(なび)かせた女の人。
何故だろう。その人を見た瞬間、トクリと心臓が高鳴った。全然会った事もない人なのに、凄く…懐かしく感じたんだ。
――オレ、この人の事、知ってる気がする…。
「あ、あのっ」
勇気を振り絞って声を掛けてみようと思った。
…でも、それは叶わなかった。何故なら…、
「沢田さん!!!!」
「っっ」
走り寄ったその人に…抱き締められたから。
ふわりと甘い香りに包まれる。香水とは違う、もっとずっと優しい香り。
「……わだ、さん…さわ……さ、……んっ」
何度も、何度もオレの名前を呼んで、強く、強く抱き締める…。痛いとか、苦しいとは思わない。
ただ、切なかった。
この人に泣いて欲しくない。この人の涙は見たくない。そんな感情がオレの胸に渦巻いていた。
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